劇場公開日 2021年3月26日

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「出版業界という村社会の改革者」騙し絵の牙 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0出版業界という村社会の改革者

2021年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

自分がどういう「村」の住人で、その「村」の外で何が起きているのかを認識できている人間は少ない。特に日本は内輪の人間関係で完結する村社会なので、その小さい村での派閥闘争や権力の奪い合いをしているうちに、外の世界の変化に気づかず沈没していくみたいな光景をよく見る。
本作は、出版業界という「村」の物語だ。斜陽化する出版業界、紙の雑誌はどんどん部数が落ち、赤字なのに文芸雑誌だけは「聖域」として誰も手を出してはいけない。そんな「村の掟」に外の作法を持ち込み、かき回して一気にレジームチェンジを仕掛ける男を、大泉洋が演じているのだが、彼の掴みどころのない飄々とした感じがすごくハマっている。この主人公は、村の論理もよく知っていてその間隙を突くというか、真っ向からぶつかるんじゃなく、人々の習性を利用して笛を吹いて踊らせるみたいな、そんな人物なのだ。真正面から戦うヒーローよりも、日本社会の場合、こういうタイプの方が変革をもたらすんだろうなとすごく実感させられた。

杉本穂高