「色々設定がザル」ALONE アローン ゴールド寿司さんの映画レビュー(感想・評価)
色々設定がザル
序盤から設定の詰めが甘くて、見る気が減退する。地雷のアイデアを主題に置きたい余り、その他の演出や作り込みに手を抜いている。
①冒頭の狙撃シーン。「結婚式だから」と狙撃を躊躇う。いや軍人でありスナイパーであり、重要任務にも関わらず、繊細一隅のチャンスで何してんの。ターゲット本人や子供の結婚式と仮に認識出来たならいざしらず・・・。無線で狙撃命令が出ているのに躊躇ったあげく、銃身をフラフラ動かしてスコープの反射を誘発。案の定敵に気付かれて攻撃を受けたら、結局ライフルを乱射するという意味不明行動。軍人の挙動としてはあり得ない。
②地雷原の可能性が示唆されたのに、何の根拠も無く「気にするな」と言い出す相棒が不自然極まりない。逆に「地雷原じゃない根拠」も不出。これも軍人とは思えない。
③主人公が地雷を踏み、本部に無線で救助要請したにも関わらず、本部の有り得ない回答。兵士の救助は何より優先されるのはこと米軍では当然であるはずだが、砂嵐でヘリが近寄れない?別の部隊が52時間後に近くを通るから救助を頼め?どんな軍だよ!その間に敵部隊に見つかり射殺or捕虜になったら?尚、砂嵐は数分で解消。以後快晴。でも救助は来ない。軍の行動としても現実味が無く、益々見る気が失せていく。
④英語が通じるのに会話が通じない現地人。水は持ってきてくれるのに落ちてるバッグは取ってくれない。2日目にも意味不明な会話で煽って来る。この人間の行動にも合理性が無く、見ていてイライラする。最後は哲学的な事を言ってくれるが、ありがたみは失せている。
⑤翌日になりようやく無線が再開するが、救出部隊に遅れが出ていて更に17時間掛かるという。いやヘリは??
⑥多発する回想シーンに全く思い入れが無く、伏線も無い為、感動気に描写されてもシラケてしまう。
⑦そもそもミッションに成功したとして、どうやって帰還するつもりだった?
とにかくあらゆる出来事に合理性が無いので見ていてどんどん気持ちが離れていく。
シンプルなテーマほど、設定は綿密に、慎重に練らなくてはならない。でないとそのわずかなほつれが、より目立ってしまうのだ。この作品はそのいい悪例と言える。
俳優の演技だけは良かったです。
因みに同じような「ワンテーマ」の良作例としては、電波塔に取り残された女性を描いた「FALL」だろう。こちらはシンプルな設定ながらも練られた設定、飽きない脚本に予想外の展開と、とてもよく出来ている。そちらをオススメします。