フェイ・グリムのレビュー・感想・評価
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パーカー・ポージーの代表作としても語られるべき
パーカー・ポージーが1997年の『ヘンリー・フール』では三番手の役どころだったフェイ・グリム役を9年ぶりに再演した、三部作の二作目。国際情勢を肴にした壮大なスパイスリラーに衣替えしていて、三部作で一番観る人を戸惑わせる作品だろう。
しかしブラックコメディとして非常に秀逸であり、特にパーカー・ポージーのコメディエンヌとしての才能がずば抜けていて、キャラクターの魅力を支えている。サイレント映画のような身体を張った動きの面白さは、ハートリー作品の常連で本作にも出演しているエリナ・レーヴェンソンに通じるが、この映画では二人が共演していても、個性がぶつかり合うことなくちょっとシュールなハートリーワールドの住人として息づいている。
劇中でも出会う男性、出会う男性がフェイにゾッコンになる、というネタのような設定があるのだが、実際、本作のポージーの魅力に抗いがたい。才能は広く知られていても主演作が多くないので、この映画は彼女の文句なしの代表作として語り継がれるべきなのでは。
ジャンルを飛び越えつつも「家族の物語」を追究するハートリーの創造性に感銘を受ける
97年製作のハル・ハートリー作品『ヘンリー・フール』には続編があった。その『フェイ・グリム』は長らく日本で見る術もないまま12年の歳月が流れ、そして今、ようやくスクリーン初上映を迎えることに。
この度、フタを開けてみて驚いた。なんと本作はジャンルを飛び越え、スパイ・スリラーと化しているのだ。それは9.11以降の激変する世相を濃厚に反映した物語。各国の諜報部がヘンリーの著した「告白」をめぐり熾烈な争いを繰り広げる中、妻フェイ・グリムは混沌の真っ只中に身を投じていく。
ハリウッド映画でスパイ物といえば「ジェイソン・ボーン」路線がすっかり定着化したが、一方、ハートリー監督の手にかかればこんなにも変わった映画が出来上がるのだ。そのオリジナリティに酔いしれると共に「芸術の価値、評価」が時代の空気や人の心の揺らめきによってこれほどまでに変化するのだという真理さえ、とことん突きつけられる一作である。
続編のようで続編では無いようでやはり続編ではある
続編には違いない
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