「☆☆☆★★ 原作読了済み。 今からうん十年前💦はっきりと記憶してい...」パラレルワールド・ラブストーリー 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★ 原作読了済み。 今からうん十年前💦はっきりと記憶してい...
☆☆☆★★
原作読了済み。
今からうん十年前💦はっきりと記憶しているのだけれど、カール・ドライヤーの『奇跡』を観た直後に感激し、3つのストーリーを考えた。
その中の1つが、元恋人同士の2人の話。
熱烈な恋愛関係だったのだが。お互いの家柄が邪魔をして別れる事となる。
別れてからも、男は女の事が忘れられずに探し回るも見つける事が出来ない。
10数年後。京浜東北線に乗り、ドアから車窓を眺めていた男の前に山手線が追いかけて来る。
2つの車両が並んで並走すると、向こう側のドアには昔に探し続けた元彼女の姿が。
しかし、男の車両は品川方面へ。彼女の車両は大崎方面へ。
そして画面には…。
T H E E N D
本当に才能が有ったのならば、今頃は映画界で活躍出来た…かも?と思いつつ。現実を見ると今は、スクリーンを見つめては「ああだ!こうだ!」毒を吐く日々。これが我が自身のパラレルワールド(-_-)
ついこの前の様に思えるけど、『君の名は。』で似た様な場面があり。「嗚呼!使われちまった〜!」…と、思ったものでした。
それだけに。原作はいきなり同じシュチュエーションから始まり、一気に引き込まれていった。
…とは言え、この記憶を巡る話は。読んでいても、読者をはぐらかす様な描写が続き。読めば読むほど要領を得なくなり、「…ん?どうゆう事だ?」と、何度も何度も考え込む事があった。
多少その記憶の改変に対しては、現実の出来事と区別する為か?改変された世界は…。
《scene1》
《scene2》
《scene3》
……………と。
何とか読者に理解して貰う様な工夫をされているのは感じた。
ざっくりと言えば、智彦の居る世界が現実で。智彦が居ない世界が記憶の改変がされた世界…と言ったところか?
だが、それでも頭がこんがらがってしまう人は多いと思う。
だからこそなのだろう?映画版は。途中から原作には無い説明場面・台詞等で。観ている観客に対して懇切丁寧に状況を説明していた。
それによって分かりやすくなってはいるが。果たしてそれが良かったのか?それともまずかったのか?…と思う。映画は原作の細かな部分を数多く改変されていて、いちいち挙げていたら大変なのでかいつまむと…。
記憶の改変に伴うシュチュエーションでの出来事の幾つかの中の、乾杯はポラロイド写真に。
智彦と崇史の家族は登場せず。篠崎の恋人の雅美及び、アメリカ本社の杉原の存在は完全にカット。テニスはバスケットへ。
鍵は大体原作通りだったが、眼鏡は懐中時計へ等。
更に、原作の最後の章に至るまで。崇史の身に起こっていた記憶の改変の事実は、謎のままであったのに対し、映画版では。中盤での崇史本人の口から「これが現実だ!」と、崇史本人が気付いてしまうのを、台詞で言わせている。
それに伴ってか?終盤では崇史と智彦。2人での麻由子を巡る挙句、智彦の願いを聞き入れて記憶の改変に加担する場面は詳しく描かれている。
そして、映画版が原作と1番違う点が、麻由子の存在及び立ち位置。
原作をミステリーと思いながら読んで行くと、どうにも怪しい雰囲気のまま最終章へ。
すると最終章の最後の最後。この原作は、崇史と智彦の2人に愛された女性。麻由子を巡る、単純な三角関係の恋愛小説でしか無い…との事実に軽い眩暈を受け、物語は終わる。
映画版は。この原作を(宣伝のされ方を見ても明らかな様に)ミステリー映画と位置付け、麻由子の存在を完全なる【ファムファタール】として、徹底的に描いていた。
確かに、原作自体を読みながら。「この麻由子って、2人を監視する為に居るのでは?」…と、思わずにはいられない存在で。ミステリー映画としては、映画版での描かれ方に間違いはないと思う…思うのだけれど、麻由子は原作の途中から行方不明になり。最後に至っても、その行方・存在は明らかにはされない。
「もう一度、私を見つけて」
原作では途中で居なくなる麻由子だが。映画版では、最後に崇史に対して自分の思いを伝える。
この一言がある事で。原作を読んでいて、崇史は何故に記憶の改変を望んだのか?(原作だと。自分の記憶の改変に関しての確信は持っていない)今一つハッキリとはしなかったのが。智彦の《死》の責任を痛感しての【償罪】としての意味で、自ら志願したのが分かり腑に落ちる。
但し、それによって。ミステリー映画でありながらも、ミステリー的な要素は削ぎ落ちてしまってはいるのだけれど。
その様に、原作は恋愛小説として。映画はミステリーとして。どちらにも出来不出来が存在しており。お互いに良し悪しを捕捉している感じでした。
それにしても崇史は下衆な男として描かれていましたなあ〜(´-`)
尤も原作に於ける崇史は。現実世界では毎夜毎夜、麻由子の裸体を想像しては1人で…の毎日で。流石に、ジャニーズさんとしては《それ》を描かれるよりは…なんでしょうけど( ´Д`)
2019年6月9日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン3