「2度3度といろいろな解釈ができる、スルメ映画」パラレルワールド・ラブストーリー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
2度3度といろいろな解釈ができる、スルメ映画
東野圭吾原作の映画化はすでに25作品もあり、2003年以降17年間で23本。実に年1~2本ペースで量産されている。本年はキムタクの「マスカレード・ホテル」に続いて、2作目になる。
2つの平行存在する世界(パラレルワールド)を行き交う男女3人の三角関係を解き明かしていくミステリーだ。
Kis-My-Ft2の玉森裕太が主人公の敦賀崇史を演じる。崇史には幼なじみで親友の三輪智彦(染谷将太)がいる。同じ科学者の道を選び、脳研究を行うバイテック社に共に就職した。
ある日、智彦(染谷将太)が紹介したいと連れてきた津野麻由子(吉岡里帆)は、崇史が学生時代、通学中の電車で密かに想いを寄せていた女性だった。
ところが、ある朝、崇史が目を覚ますと、麻由子は朝食を作っており、恋人として同棲していた。
夢の中で断片的に表れる異なる記憶と、実際の現実が交錯して、やがて混乱していく崇史。
1度目ですべてが分かる人は少ないのではないだろうか。実際、時系列に進まないので、1回目は脳内整理をしながら、"なるほどね"と納得はするものの、気になる謎のシーンがいくつも残ってしまう。
2度、3度と繰り返し観ることで、解釈や理解を変えることができる。噛めば噛むほど味が出てくるスルメのような作品。
タイトルに"パラレルワールド"と付いているが、普通のパラレルワールド作品はファンタジーが多く、夢のある妄想ストーリーだ。しかし本作は主人公から見て世界がパラレルなわけで、脳科学SFテイストで、言葉巧みに"略奪愛"を描いている。
下世話な見方をすれば、浮気を認めるか認めないか、罪悪感があるかないかのような、良くある独身者恋愛の話だったりもする。
当然、1度しか観なければ、主人公・崇史の目線で観ることになるが、実は麻由子目線で観ると、ひじょうに切ない物語に一変する。
冒頭での崇史セリフ、"どうしてキスするときはいつも悲しい顔をするの?"は、麻由子の心を切り裂くような残酷な言葉だ。
立場が変われば、麻由子は"ウソつき浮気女"だろうし、智彦は親友である崇史に、とても重要な秘密を託していたりもする。その真意は友情なのか、復讐なのか。
いろいろな解釈ができ、何が真実なのかはわからない。まさにスルメ映画なのだ。
(2019/5/31/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)