「世界の果てまでいっぱいの謎とお姉さんへと続くハイウェイ」ペンギン・ハイウェイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
世界の果てまでいっぱいの謎とお姉さんへと続くハイウェイ
公開前はほとんどノーマークだった本作。
公開始まったら、賛否はあれど、なかなかの評判。
そして、いざ見てみたら…、
さながら劇中のペンギンのように、突然誕生。
映像は美しく、世界観は不思議でユーモラスでイマジネーション豊かでファンタスティック。
新たな才能の登場が嬉しい。
傑作アニメがまた一つ。
当初はごくありふれたファミリー向けファンタジー・アニメと思う。
ちょっと変わってるとすれば、主人公の少年像。
この手のアニメ作品の場合、明るく元気な“THE男の子”が多いが、本作のアオヤマくんは、
かしこい。
学園アニメのクラスに必ず一人は居る秀才タイプ。そんな脇役キャラを主人公にしたような。
とにかく研究大好き。日々の勉強や気になった事のメモは怠らない。
性格は小生意気と言うか、ちと理屈っぽい。子供が背伸びして、大人びているような感じ。
人によっては可愛げ無いと感じるだろうが、ふとした所はやっぱりまだ子供で、個人的にはこのアオヤマくん、愛らしくて好きだなぁ。
そんなアオヤマくんの“研究対象”が、もう一つ。
歯科医院のお姉さん。
他愛も無い話をしたり、いつもの喫茶店でチェスをするのが日課。
性格は自由奔放。
美人で魅力的でスタイル抜群で、巨乳。
そうそう、アオヤマくんはお姉さんのおっぱいも好き。
勿論、この年頃のいやらしい目線でではなく、あくまで研究対象として。
まあ一応、健全…かな。
そして、何処かミステリアスなお姉さん…。
そんなある日、街に不思議な出来事が…。
街の原っぱに突然、ペンギンが出現。
ぺ、ペンギン…?
何故…?
海に面していないこの街。
動物園へ運搬中脱走したか、誰かのペットが逃げ出したか、あれは本当はペンギンではなく何かの動物の突然変異か、それとも地球侵略を企む異星人の手先か…!?
アオヤマくんは友達のウチダくんと共に、謎を解明しようとする…。
街中に突然現れたペンギンだけでも充分不思議。
しかしアオヤマくんは謎を調べる内に、更なる不思議を目撃する。
お姉さんが缶ジュースを放り投げると、それがペンギンに…!
…どゆこと!?
「!」と「?」が何個も何個も沸いて出る。
お姉さんは一体…?
ただびっくりしてるだけじゃないのがアオヤマくん。
「この謎を解いてごらん」とお姉さんに言われ、研究心が大爆発!
少しずつ少しずつだが、どういう状況下でお姉さんはペンギンを出す事が出来るとか(お姉さん自身も何故自分がペンギンを出せるのか分からない)、研究を進めていく。
ペンギンの謎。
お姉さんの謎。
そして、もう一つ。
同級生の同じ秀才タイプの女の子、ハマモトさんが森の果ての草原で見つけた謎の“海”。
謎の怪物も現れる。
不思議な出来事が続出し、大事件に。
まるで世界の果てのような謎と不思議と事件。
この街に、何が起きているのか…!?
一応これでも多くの映画を見ているので、オチなどこういう事かなぁとある程度考え付いたりもする。
が、本作は例外。
全く予想も想像も付かない展開。
この世界に予想も想像も出来るのはただ一人。原作者の森見登美彦くらい。
言葉で語るのは難しい。
是非ともご自身の目で目撃して欲しい。
少しずつ明らかになるお姉さんとペンギンと怪物と“海”の関係。
この不思議な物語の果てを。
不思議な作品ではあるが、しっかりとジュブナイル・ファンタジーとしても成立している。
子供が見るにはちと難しい点もあるかもしれない。でもきっと、何かを感じる。
大人には心に響く。
子供たちのひと夏。
冒険、成長、友情。
謎、好奇心、探求心。
そして…。
アオヤマくんはお姉さんに、不思議な感情が芽生えるのを感じる。
アオヤマくんにはそれが何であるかはっきりと説明出来ない。
アオヤマくん、それは“アレ”しかないんだよ。
決して恥ずかしい感情じゃない。
純粋で、大事で、素敵な感情だよ。
だからこそラストのお姉さんとの別れは…、切ない。
世界はヘンテコで、謎がいっぱい。
ぼくたちは謎を解明し、一歩ずつ一歩ずつ…。
世界の果てで、お姉さんと再会するその日まで。