「おっぱいを考えると平和になる」ペンギン・ハイウェイ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
おっぱいを考えると平和になる
毎夏には、アニメ大作がスクリーンを賑わす。勿論その中には明らかにテレビアニメの特別映画版、そしてよりアニヲタに寄った作品も網羅されるのだが、その中で老若男女やマニア度を問わず、より普遍的な層をターゲットにしている作品が今作と『未来のミライ』である。となると、果たしてどっちを選ぶか、勿論時間とお金に余裕のある人ならば両方なのだが、邦画アニメは1本だけでいいと思っている人も多いのではないだろうか。同時期上映ならばより感動を与えてくれる、まぁ結局『ジブリ的』作品を望んでしまうのが情けない所だが真実だ。あっちは日本テレビ、こっちはフジテレビという代理戦争も孕んでいるので、どちらも日本人の良心に響く保守層テレビ局としての自負もあるのかもしれない。
そんな中で自分が選んだのは今作。細田作品はもう何本か観ているので、やはりここは『コロリド』発の長編作品という触込み
に期待をしてみたいものだ。
絵柄やルック等は奇を衒わないオーソドックな作りである。アニメーションとしての真面目な画作りが好感を持てる。原作が『夜は短し歩けよ乙女』の森見登美彦ではあるが未読。でも題材も興味を持てる。
で、感想なのだが、前出の通り、きちんとした真面目な作品に仕上がっていた。スピード感も充分観応えがある。ストーリーは原作があるのでどれだけ忠実なのか、それともオリジナリティが色濃いのかは不明だが、アニメでしか表現出来ない世界観なのだろうからピッタリなのであろう。コーラ缶がペンギンにメタモルフォーゼする描写は圧巻のアニメ表現である。まぁ、『海』と称する水状の球体とペンギンを扱うお姉さんの関係性は、少年がそれなりに“エウレーカ”(アルキメデスが風呂に入ったとき、比重の原理を思いついたときの叫び)した解説ではさっぱり理解出来ないオツムの弱い人間なので、謎解きのカタルシスは得られにくい。なので結局、お姉さんが一体何者で、どういう理由で存在しているかの明快な正解を受け取れなかったのだが、そもそも今作品に於いては、謎解きが重点ではなく、“ジュブナイル”というジャンルとしての少年達の冒険譚、又は思春期に始まる性への興味をテーマとしたかったのではないだろうか。大人だって分からない超常現象をガチガチに屁理屈捏ねるよりも、お姉さんのおっぱいのほうを捏ねたい衝動は、どんなに頭でっかちのこまっしゃくれた小僧でもそれは訪れ、そして逃げられない。そして母親とは違う、異性への恋慕を、この特異な世界観で表現しようとした、小説やアニメに最大限の評価をしたい。まぁ、謎解きのシークエンスは、多分リピーターをプロダクトする為の戦略なのだろうけどね。小学校の自由研究が得意な、そして何故か理科実験器具をちゃっかり使用している、何とか賞を授与しそうな、模造紙たっぷりの自己主張の激しい子供の日常生活を垣間見た、変化球の作品、しかしアニメーションは至ってストレートである。それにしても、お姉さんのあの動じない肝っ玉振りは、やはり“宇宙人”という設定だからなのか、それともああいう女性を男は好んでいるということなのだろうかw