ウトヤ島、7月22日のレビュー・感想・評価
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悲劇的で恐ろしい。が、極めて誠実で底知れぬ意志を秘めた作品でもある
このところ映画ファンのみならず、ごく一般的な人にも「長回し」はお馴染みの手法となった。が、それにしても、本作で貫かれる72分間の絶えざる視点は、歴史的な惨劇を決して風化させまいとする強靭なまでの意志が突き刺さってくるかのようで、芯から恐怖し、同時に大きな感銘を受けた。
実際の事件を題材としつつも、作り手たちはこの一部始終を紡ぎ上げるのに入念なリサーチを行い、あの日、あの場所で何が起こったのかについて様々な証言を集め、その上で、尊厳を守るためにあえてフィクションとしたそうだ。これによって本作の主人公は「誰でもない」と同時に、「あらゆる人々の集約でもある」という解釈も可能となるのだろう。
音楽や編集を加えることなく、カメラを回しっぱなしで「そのまま見せる」という選択も、筆者の目には極めて誠実に感じられた。本作が今後どう評価されていくのか、10年、20年といった長いスパンで見守っていきたい。
『カメラを止めるな』37分『ウトヤ島、7月22日』72分
7月に因んで初鑑賞
政府の移民政策反対派でクリスチャン系極右テロリストのアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが起こした銃乱射事件
ウトヤ島でキャンプをしていた青年労働党の若者たちがブレイビクに襲撃され多数の死傷者を出した
ノルウェーは死刑制度を廃止したため逮捕されたブレイビクは20年以上の禁固刑で済んでいる
2011年にノルウェーでこんなことがあったんだね
知らなかった
その年の7月22日といえば3月11日の震災から4ヶ月後で海外のことなんてそれどころではなく殆ど興味が持てなかった
一晩明けて見に行くと気仙沼では気仙沼線が横転し利用客などが外に放り出され死体となって転がっており電線には無数の遺体がぶら下がっていた
72分の長回しがこの作品の1番の売りだが長回しという演出そのものは取り立てて目新たしいものではない
R指定ではなく子供でも鑑賞できるので目を覆うような残酷なシーンはない
そうなると姿が見えない殺人鬼が逃げ惑う若者たちを演じる俳優陣の演技力が生命線といえる
たしかに意欲は感じる
社会的テーマの塊だ
だが星5や4の作品とは思えない
しかし星1や2のレビューにはあまり共感できなかったので自分的には星3が無難
ノルウェー人と日本人との温度差を感じる
そりゃそうだ
日本人にとってノルウェーは隣国ではないし馴染み深くはない
ノルウェーではかなりデリケートな問題で気軽に話題として触れてはいけないようだ
身近に日本語を話せるノルウェー人はいないのでそういう機会はないのだが
ちなみに僕は移民問題に反対も賛成でもない
海外の移民問題に詳しくないからだ
そもそも日本には移民問題はない
強いてあるとすれば移民ではなくそれは難民だろう
アジア系の出稼ぎ労働者は数年で帰るので移民じゃないし在日朝鮮人に関してはパヨクやネトウヨが自身の主義主張のために問題化にしたいだけ
レビューの中には自業自得という意見もあるがはじめはかなり抵抗感があった
放置しておくところをみるとカカクコムとはそういう企業なんだろう
だが自分は削除依頼などという自分が気に食わない意見を排除し無かったことにしようという自己中かつ乱暴な思想は待ち合わせていない
怒りとは原因の殆どが理解不足らしい
だとすれば移民問題に不安を持つ人々に対しネオナチというレッテルを貼り見下し敵視するよりその不安を解消するよう話し合い歩み寄る努力を怠ったリベラルは自業自得なのかもしれない
ワンカット的描写と先の見えない恐怖感が終始緊張を持続させる一作
2011年にノルウェーで起きた連続テロ事件の舞台の一つ、ウトヤ島での襲撃事件を、その被害者の視点で描いた作品です。
一人称視点に近い画角のカメラワークと、ワンカット(おそらく適宜カットごとをつないでいるので、「ワンカット”風”」という表現のほうが妥当なんだろうけど)の映像が、観る側の緊張感を否が応でも高めます。
さらに日本では、ウトヤ島の事件がどのような結末となったか、詳細を知る人は少数でしょうから、この事件の帰結がどうなるのか、先行きの見えない不安がさらに恐怖感を高めます。
作品本編でも状況説明はごくわずか。ウトヤ島に滞在している若い男女(政治団体の党員たちなんだけど、単なるキャンパーたちの集まりのようにも見える)が、冒頭からいきなり銃声を浴び、逃げ惑います。
作中では断続的に続く銃声と悲鳴が聞こえたり、目の前を襲撃者から逃れる人々が通りすぎる描写が大半で、主人公のカヤ(アンドレア・バーンツェン)と同様、何が起きているのか観客にはほとんど理解できません。襲撃犯の姿も、ごくわずかに影らしいものが見えるのみ。
このように本作は、テロの背景を掘り起こす、というよりも、明らかに突然テロに巻き込まれることの恐ろしさを仮想体験させることに主眼を置いています。本作を踏まえてノルウェーの連続テロ事件の概要、そしてウトヤ島で実際に何が起きたのかを知りたい場合は、『7月22日』(2018・ドキュメンタリー)などの作品の鑑賞をおすすめします。
自分もその現場にいたかのような 臨場感を出す為ワンカット風(地面に...
特にない
72分撮るために間が長い
濃い恐怖と不安を描いた体験型の意欲作
映画と言うよりは、すごく大仕掛けの演劇に近い。そこにカメラを持ち込んでやり直しなしの一発勝負で撮り切ったような作品。類似のものとして『クローバーフィールド』『1917 命をかけた伝令』などが挙げられる。
この映画の魅力は何と言ってもライブ感。実際に起きていることをその場に居合わせたような緊張感で体感できる。映画の冒頭でも注意書きが出るが、カメラが動きまくるので酔ってしまう人は苦しいだろう。音楽はほぼゼロ。よそから聞こえてくる音楽と、女の子が気持ちを鼓舞するために囁くトゥルーカラーズ(シンディ・ローパーほか)が使われているのみ。それもやり直しがきかない状況で歌ったものだけに、母親に抱っこされて聴いた子守唄のような感覚に近い。
いずれにしても、何もかもがやり直しなしの一発勝負で、始まったら止められない無編集のフィルム。映ってはいけないものや、映さないといけないもの。その複雑な段取りにはかなりの入念なリハーサルが繰り返されたものと想像できる。最後にやや長めの映画についての趣旨が綴られるが、「フィクションであり、ドキュメントではない」と、ハッキリ明言している。だとすれば、もう少し稽古を積んで見せ方を工夫してもよかったんじゃないかと思う。何しろもう一度見たいとは絶対思わない。
ほぼ素人に近い無名の若い俳優しか出ていない。例えば、5時22分ごろにここで撃たれた状態で倒れているように。とか、46分ごろこっちから向こうに一列で走って逃げて。とか、60人ぐらいの集団を複雑に動かしている。クレジットされている俳優さんたちと、エキストラの人数を見たら、かなり大掛かりの撮影のようだ。とにかく恐怖に耐える子供たちの表情は最後まで目が離せない。
ストーリーは、ほとんど無いに等しいが、主人公の妹や、親しい友達がどうなるのかが語られる。(というか、映っている)それ以外、犯人の目的、事態の収束、子供たちの運命、などの顛末が語られないままなのが非常に残念でならない。実際に起きたことを再現しているようなので、最低限の説明は挿入してほしかった。事件については、Wikipediaなどで知ることができる。先に見てしまうとネタバレになるし、映画の中で最低限語られるべきことだろう。そこは不親切と言わざるを得ない。
体験型の、非常に濃い恐怖と不安を描いた意欲作だ。子供には刺激が強すぎるかもしれない。
2020.2.27
リアルな恐怖
日本で良かった
ちょっと違った目線から
昨日、姉から勧められて『どうせ姉妹の話の映画で感化されちゃったんだろう、単純脳なんだからなぁ〜』てな感じで今日観ました。
他の方のレビューをさらっと読んだのですがテロに関してのレビューばかりで姉妹の話は全く出てこないので、あえて妹の立場目線からのレビューしようかなと。
『ほっとけ』ですね。
妹は妹で賢いのでいつまでも姉の思うような[か弱くて何もできない女の子]ではありません。むしろ姉よりもずる賢く上手く立ち回れる、それが妹。各自で身を守りましょうです。
妹目線からのレビューはさておき、
この映画では犯人を倒そうとする正義感の強いキャラが1人も出てこないんですね。ただただみんな逃げ惑うのみ。
日本の3.11の年に実際にあった話だそうで、全く知らなかったです。この映画の人物はともかく、こんなテロに出くわしたらたまったもんじゃありませんね。
沖縄の離島あたりで例えて考えてみたら物凄く怖いですね…
犯人の映像が映るのは一度一瞬くらいでしたが、警官の格好をしていて、複数人とのことで(実際の事件はたった1人の犯行だったらしいけど映画では複数人って男の子が言ってなかったっけ?)
はたして我々日本人がこういう状況下に陥ったらどうなるんですかね
映画の見過ぎで感覚がおかしくなってるのか、どうしても戦いたくなってしまう。ランボーやジャッキーじゃないんだから到底無理なのでやめとけですね笑
まるでノンフィクション
この長回しはありかなしか
ほんとは劇場で観たかったですが。それならもう少し評価は高かったかも。
長回しが売りになっているが、むしろ誰でもない人物(神というか観客視点)のPOVになっていて、そこが可もあり不可もあり。疑似体験させるという意図はわかるが、フィクションにするのならもう少しやりようがあった。あと虫は偶然ならとてつもないタイミングだったことになるが。
どちらにしても死んで当然とは微塵も思わないが。
ただ地図を見るとこの島は南北約500m東西約300m位に見えるので、ネズミーランドよりも狭そう。正しい状況が掴めない中でパニック状態ではどこへ逃げても一緒かも。
今日存在を知らずにキャンプ場のそばを偶然通りがかり、テントがたくさん張ってあるのをみて、慌てて立ち去った。何でよりによって。いや〜。
パーンパーンパーンパーン
テロ被害の追体験
行きつく暇のない72分間だった。実際の事件の発生から収束までをリアルタイム、ワンカットで再現、聞こえる発砲音540発も再現している。POVなので緊迫感と圧迫感が凄まじい。
最初には主人公たちと同じキャンプ参加者目線なのかと思ったが神目線というか透明人間目線だった。ひたすら主人公のそばで主人公と同じ目線で追体験するテロの恐怖。この惨劇を見ているのはカメラではなく自分の目なのだ。
POVには「なんでこいついつまでもカメラ持ってんだ問題」がつきまとうが当事者たちの混乱や恐怖を描くには最適な手法だったと思う。
遠くから鳴り響く発砲音と悲鳴。誰もがパニックに陥っていて犯人の人数さえわからない。
黄色いコートを脱げと言っても頑なに手放さなかった少年。
喋るなと言っているのに悲鳴を上げようとする少女。
逃げようと言っているのに母親に電話をかけ始める主人公。
誰もかれもが見ていてもどかしく冷静な行動を取れない。そりゃそうだ、あそこにいたのは10代の普通の少年少女たちだったんだから。
犯人や周囲の描写がないから映画としては微妙、B級ホラーなどというレビューもあるがそこをもう一歩踏み込んで是非テロは身近でそして無差別に降りかかる恐怖であるという日本に住んでいると実感しにくい事実をその目で感じてほしいと思う。
たしかに悲劇、だが映画としては…
意欲的であるとともに社会性がある
一人称視点(POV)の映画といえば
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」で
世界的にも認識され、
「パラノーマルアクティビティ」や
「クローバーフィールド」などが記憶に新しい。
本作においても一人称視点で物語られるストーリーは
恐ろしくリアリティがある。
ただ、それは単なる銃撃による恐怖ではなく、
その恐怖に「自分が自分で無くなる」という恐怖が
作品の背景にあると思った。
自分をコントロール出来なくなる恐怖は
一人称視点の映像と相まって痛いほど感じた。
本作の社会的な政治背景としてはシリアをはじめとした
中東地域での紛争による難民、その背後にある極右的な考えなどがある。
日本には馴染みが薄い感覚だが改めて考えて、
この様な惨劇を繰り返さないためには何が
出来るのだろうか、後悔のない選択をする際に
思い出したい映画であると思った。
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