「夏目漱石とは関係ないと思っていたら・・・」それから kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
夏目漱石とは関係ないと思っていたら・・・
なぜモノクロームなのか?という疑問が常につきまとって、カラーにすればいいのにだとか、カメラをもっと定点にすればだとか、音楽をもっと使えばいいのにだとか、プロットとは関係ない方で考えさせられる。
評論家でもある小さな出版社の社長は「冬ソナ」のキム次長クォン・ヘヒョ。夫婦仲は順調のようでも愛人がいる社長だが、会社も辞めてしまい連絡が取れなくなったことから信頼できる教授の紹介でアルム(キム・ミニ)を雇う。しかし、社長夫人が浮気を疑い会社に乗り込んできて、ひと騒動。その後、社長、愛人、アルムの3人で食事をし、結局1日だけで会社を辞めることになってしまった。言ってみれば“身を引く”行為。
文学的、哲学的な会話において、「生きる理由」「実存性」「信じるということ」について語り合う社長とアルム。どことなく夏目漱石の「それから」を想起させるも、韓国での独自の解釈なのか?経済的理由がないのが残念だ。むしろ、家族について語り合う場面が多い。
浮気のシーンなんかは時系列通りではなく、社長の記憶の中でのエピソードなのだろう。そのおかげでアルムの出社一日目の流れに割り込んできて、一日という瞬間を感じられないのが残念だったし、彼女の「こころ」が失われたかのよう。失職しても大丈夫そうだし、彼女が高等遊民なのかとも思えたが、恋愛感情はなさそうだった。そして、終盤の再会ではパラレルワールドなのかと思わせておきながも、単に健忘症なのだとわかる・・・まじか。それでも夏目漱石の小説を渡すところでなぜかジーンとくる・・・
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