「テレサ・テン」芳華 Youth カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
テレサ・テン
今は閉館中の恵比寿ガーデンシネマにはるばる出向いてみたうちの一本。
映像のきれいな映画でした。女優さんたちのスレンダーなスタイルや踊りが印象的でした。どうせ当局に検閲された中国のアイドル俳優たちを起用した文化大革命を正当化する宣伝映画だと思い、憎まれ口を叩くのも癪なので、レビューはパスしていました。
それが、昨晩、NHKの映像の世紀バタフライエフェクトで【我が心のテレサ・テン】をやっていて、この映画が説明に使われていました。組織された芸能部隊の若者が隠れてテレサ・テンのカセットテープを聴く場面でした。それで、胸きゅんして、意欲がムクムクしちゃいました。
我が心の歌姫。テレサ・テン。
42才の若さでフィリピンのホテルで謎の死をとげたテレサ・テン。
歌手なのに死因が喘息なんて、信じられませんでしたね。
あの時代、外国の文化に触れたくて仕方がない大陸の中国人はオーストラリアのラジオ局がわざと流す短波放送を隠れて聴いたり、外国のテレサ・テンのカセットテープを内密に手入れ、隠れて聴いていたのです。テレサ・テンの歌は全世界の中国語がわからないチャイナタウンの華僑、華人の心の琴線にもふれました。ちなみに、若いときから共産党幹部だった、しゅ~きんぺ~もテレサのカセットテープ隠れて聴いた派らしいです。鄭小平は昼間の鄭さん。夜の鄭さんはテレサ・テン(鄭麗君)と言われるほど、絶大な影響力。政府のプロパガンダに利用され、弾劾もされたテレサ・テン。紹介された映像ではロードローラーでカセットテープやCDが壊されていました。
芳華でも紹介されたその曲は
つぐないではありません。
時の流れに身をまかせでもありません。
1977年のテレサ24歳のときの
「月が私の心を映している」
(月亮代表我的心)
です。
毛沢東の文化大革命(1966~1977)で台湾に逃げてきた人の話は親づてに聞いたことがありましたが、こんなにひどかったとは。バブルを迎えた中国人が失った仏像などの文化遺産を買い漁る理由がよくわかりました。中越戦争は中国がベトナムに行った侵略戦争で、この映画の舞台でした。
文化大革命のひどさ、むごさは「さらば 我が愛」(今週金曜から渋谷のル・シネマ。映画館で初めて見ることできるのが嬉しいです)で知りました。夏は演劇「M.バタフライ」を見る予定です。