「ありがとうに気付く幸せ、伝えられる幸せ」トラさん 僕が猫になったワケ 来蜜さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとうに気付く幸せ、伝えられる幸せ
2019/02/15 「トラさん」レビュー
顔と腕が人間。しかも二足歩行。なのにひょっとした仕草や姿が猫に見えるくらい自然にすんなり観られたのは、引き込まれていくお話の内容と北山さんの演技力のせいだろう。
常に家族に「愛している」と口に出せる寿々男はダメ男ではあるが悪人ではない。憎み切れない良さがある。ただ残念なのは、自由に楽しく生きている自分が存在するのは、そんな自分を認めて愛してくれる家族や周囲がいるからという事に気付けていないところ。
猫の姿になって感謝の気持ちに気付けた事は、寿々男にとって幸せだったと言える。胸がじわりと温かくなる涙を流していた。
しかし、号泣する程に泣けなかった。幸せに感動する涙は流せなかったと言おうか。
「ありがとう」の気持ちに気付けたのに、それを伝え続ける事が出来ない。死とは、別れとはそういう事。だから「ありがとう」を伝えられなくなる寿々男は幸せとは言えない。
自分は周囲の愛、優しさに気付けているだろうか。感謝の気持ちは伝えられるうちに伝えねばという思いで映画館を後にした。
帰りの車、振動でネコの鈴がチリチリなる音を聞きながら、最後の朝の切なさをはらんだ笑顔を思い浮かべながら、やっぱり寿々男は幸せではないだろうとじわじわ涙が止まらなかった。
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