「なんか凄い作品に出会ってしまった感じ。」生きてるだけで、愛。 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
なんか凄い作品に出会ってしまった感じ。
予告編を観てから鑑賞意欲が湧いたのと、本谷有希子さんの作品は未鑑賞だったので興味もあって鑑賞しましたがなかなか観るまでが腰の重い作品w
感想はと言うと、なんか凄い作品。好みはハッキリと分かれると思いますが、個人的には凄い作品に出会った感じ。
無職・寝てばっかのメンヘラな彼女が同姓相手の彼氏に依存しているが、ある日彼氏の元カノが訪ねてきて、その元カノが彼女以上にメンヘラで、その彼女の復縁をするために嫌々ながらも社会復帰を試みると言うのがストーリーを簡単に説明するとそういう事なんだけど、そんな簡単な話では無い。
とにかく全編に漂う虚無感と言うか、人間の他人には見せてはいけない、面倒くさい部分が漂っていて、なかなか重い。だけど、人が多かれ少なかれ抱える部分でそこが切なくも共鳴出来ます。
一番そこがポイントで、ここに乗り切れないと多分途中から単に面倒くさいだけの映画になるかとw
でも、何処かで鑑賞中に腑に落ちると引き込まれて行く感じ。
趣里さん演じる寧子がかなり痛いが、途中から出で来る仲里依紗さん演じる安堂がもっと痛い。
毒には毒を制するみたいな感じで寧子が徐々に社会復帰していくのがギャグではあるが、自分が抱えるちょっとした引っ掛かる部分が他人には分からない事のジレンマに悩むが、周りの人が良い人なので余計に苦しむ。
単純に他人との価値観の違いとは言えない所が切ないです。
とにかく寧子役の趣里さんの演技が圧巻。彼女の漂わす雰囲気に翻弄されます。
凄く面倒くさいので同姓相手には御免被るんですが、元カノの安堂はもっと面倒くさいw
彼氏の津奈木役の菅田将暉さんが実は広い心で寧子を受け止めている様で実は一番痛いのではw
駄目な彼女が好きだったのに、頑張る彼女に居心地の悪さを感じてきて、ストレスを溜めていきます。
同じバイト先の先輩の莉奈がなかなかナイスですが、結局一度も顔を出さなかったお姉ちゃんが良いアクセントになってます。
ラストの全てをさらけ出した寧子がまさしく全裸でさらけ出すのは演劇的な感じですが、逆にストレートで良い。
“こんな面倒くさい女と何故付き合ってる?分かれる事も出来るのに?でも津奈木は良いなぁ。私と別れられて。私は私と別れられない。”と言う台詞はキリキリと心に突き刺さります。
自分自身で変えたいと思う気持ちがあっても、そんな嫌な部分も含めて自分自身で、そんな部分を否定も変える事も出来ないし逃げる事も出来ない。そんなに真正面から自分自身と向き合う事がないからそこまで考えた事はなくても、理想とする自分に向かっていくのではなく、自分の嫌な部分と向き合っていきながらも他人との不快感に悩む葛藤がいとおしい。
「ウォシュレットの怖さが何故他人には分からないのか?」なんて分かる訳がないのも分かっているのにそこに誰も引っ掛からない事に自問自答→爆発→暴走していくのも分かる様で分からないけど、切なくもいとおしくて、鬱陶しいw
劇作家の本谷有希子さんの他の作品もこんな感じか分かりませんがかなり演劇チックです。
言葉の選び方は内面の弱い部分を曝け出しながらもそこに嫌悪するけどそれもこれも自分。
正直大作では無いし、万人受けはしませんが、劇場で観るか、DVDでこっそりと一人で観る作品かとw
今年の最初に「勝手に震えてろ」を鑑賞しましたが、そんなに期待してなかっただけに同じくらいに当たりを引いた感じ。
こういうのがあるから、少しでも興味が沸けば映画館に足を運びたくなるんですよね。
腑に落ちるポイントはそれぞれで乗り切れない人もいるかと思いますが、個人的になんか凄い作品を観れた事に重い腰を上げて観て良かったなぁ♪と思えた作品です