「いきなり撮ってと言われてもどう撮っていいのか…」スティルライフオブメモリーズ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
いきなり撮ってと言われてもどう撮っていいのか…
何とも難しい、捉えどころのない難しい抽象的作品である。全体がメタファーに彩られ、人間の一生を旅するようなそんなイメージでくるまれているようだ。比喩もあるが直接的なメッセージもある。カットが変わる時の、初めのモノクロの映像からカラーへとモディファイする視覚効果も、何かの暗喩なのだろう。ただ、如何せん、決して映ってはならない身体の部位をフィーチャーしているストーリーなので、これが最大のモヤモヤなのかもしれない。エロスとタナトスを盛り込んでみたりと、色々詰め込みすぎたのも原因の一つであろう。
まぁ、加納典明が猥褻物陳列罪で捕まっているので、この辺り、芸術なのか猥褻なのかのラインは人それぞれだろうし、そもそも“芸術”という心の拠所に委ねる感覚は曖昧だから面白いであろう。なので、今作品のテーマ性やコンセプトは大変興味深い内容であった。
しかし、だからこそ演技陣の不甲斐なさが目立って仕方がなかった。特に主役の安藤政信の演技のメルトダウン振りは目を見張るものがある。まるで“熱海殺人事件”前の阿部寛の大根振りを彷彿させる。周りの共演陣もまるでAVの演技そのものであったりと世界観を形成できていないようにみえた。視聴覚の効果面で、自然音の強調をしてみたり実験的な匂いも感じる。
もう少し、シンプルに構成してみれば観やすかったのかもしれない。演技がどうしようもないので表現するのが困難かも知れないが、例えば、主役のカメラマンの魔女にのめり込む過程をもっとドラマティックに演出してみればと考えたりする。女性二人が“不思議ちゃん”被りだったから対比もしにくいしね。光るセンスを感じた作品なのだが、アートを意識しすぎたのかも・・・