「全体的に薄い内容」ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow たろうさんの映画レビュー(感想・評価)
全体的に薄い内容
μ'sのテレビシリーズと劇場版、アクアのテレビシリーズを視聴済みの上で観賞。
ダンスシーンは沼津の町やスペイン広場など様々な場所で行われるので見ていて飽きない。特にセイントスノーのライブシーンは圧巻だった。
しかし、肝心なお話の部分が上手くいっていないように思えて仕方ない。恐らく多くの人が思うことだろうが、今回の劇場版は前作の劇場版と比べて多くの要素が詰め込まれている(新キャラの登場、分校問題、海外行き、母親説得、セイントスノー、最後のライブ)。メインの9人にも見せ場を用意しつつこれらを約100分で描かなくてはいけない。そして描いた結果が今作である。
μ'sの劇場版も細かいツッコミ所は多々あったが、あちらはテーマがハッキリしていたし、海外へ行ったことが後の話にも繋がってくる。主人公の未来(と思われる)新キャラも主人公の成長と、μ'sのメンバーの未来が開かれる様を描く上で必要な存在だった。だが今回の海外行きは本当にしょうもない理由だ。「海外に行くまでに解決しとけよ」とつい思ってしまう。母親との確執もライブ一つで解決してしまい、味気ない。もう一人の新キャラ月ちゃんがいるが、彼女も都合のいい存在にしか思えない(分校問題の説明、イタリアの案内、ライブの撮影等)。
そんな中ではセイントスノーのエピソードは強く印象に残った。スクールアイドルとして新しく再スタートした妹は上手くいかず挫けそうになっている姿は見ていて辛いが、姉の言葉で救われてエンドクレジットで新たな出会いをして明るい未来を予感させるという明確なカタルシスがある。この姉妹の出番は少ないが無駄がない。正直なところ、観賞後に一番印象に残ったのがセイントスノーでした。それに対してアクア側のエピソードは全体的に薄い。前述した通り、母親がライブ一つで簡単には絆されてしまうのでカタルシスを感じられない。
そしてクライマックスだが、ここも物足りなさを感じてしまった。今までアイドルをやって来た仲間が去っていくという号泣もののシーンのはずだが…上手くいっていないと思う。最後はメンバー全員で歌わせたいという、勿論大人の都合もあるのかもしれないが、やはり六人にした方が今作のテーマにも合っている(あるいは始めは9人で途中から6人にするとか)。この演出のせいで今作のテーマもぼやけて見えてしまう。すごく惜しい。
総括すると、いろいろ詰め込まれてはいるが、それらが有機的に絡んでいるとはいえず、全体的に印象が薄い。セイントスノーの楽曲とエピソードが良かったが、そのせいでアクアのエピソードが影に隠れてしまった印象。
どうでもいいですがパンフレットを買いました。どうやら海外へ行くことにしたのは前作のμ'sも海外へ行ったからという軽い理由らしいです。…海外行きが悪いわけではないですが、だったら海外へ行く理由がもう少し意味のある脚本にしてもらいたいですね。あと、もし次回の劇場版があれば海外へ行ったら最後までずっと行ったままでもいいと思いますよ。