「文化の違いを垣間見る」ガンジスに還る つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
文化の違いを垣間見る
不思議な夢をみて死期を悟った父は、最期の時を迎えるためガンジス川のほとりにある悟りの家にいくという。
病気だとか、もう本当に死んでしまいそうなほど老人であるとかそんなわけではないところが興味深い。
ただ夢をお告げだと「信じている」わけだ。
この作品中で描かれることは2つかなと思う。作中における「解脱とは」と、息子の父離れだ。
まずは「解脱」について。
悟りを開くことで安らかな死を迎えることができるわけだが、一体何を悟るのかが重要なのだ。作品の中では、やり残したことがなくなることかと思う。
残された人がしっかりやれるように導くこと、示すことなのではないかと思う。
父親は息子の精神的な自立を促すことで「解脱」する。それは2つ目のテーマである息子の父離れに直接繋がる。
ヒンドゥー教とかイスラム教圏の人は親に対する愛情が過剰に深い。それは全ての中心が親であるかのごとく。文化の違いなので批判するつもりはないが、父親のために息子が命を投げうつなんてことが映画などではよくある。
例えば父親が命の危険がある人質になっているとする。日本などではその場にいる息子に対して、危ないからお前は逃げろと父親が言うものだ。これがインドや中東の国になると、自分が人質になるから父親を離せと息子が言うわけだ。酷いやつだと人質になっている父親が自分の息子に代わることを強要したりもする。
つまり、文化的な違いからくる息子の父親への依存ともいえる状況が出来上がっているわけだ。
穏やかな映像と演出で、文化を破壊しない程度に行う家父長制へのアンチテーゼだったように感じた。
ドギツくやりがちな欧米と違ってマイルドなところが本作の魅力かと思う。
最期の時を迎える解脱の家が舞台なので人が幾人か亡くなるわけだが、悲壮感よりも美しさが先にくるところも魅力的だ。
全体的になんか優しいんだよね。