「16歳の自分が今の私を見たら失望するだろうか。」ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
16歳の自分が今の私を見たら失望するだろうか。
トランプ大統領の首席戦略官だったバノンさん(顔かたちはともかく、ニュース映像から受けてた印象がそのまんまでした)を模したと思われる人物を、あのゴラムのアンディ・サーキスさんがメディアの経営者、そして権力にすり寄る私欲でギラついた中年男を見事に演じ切ってました。
このタイプの映画に出てくる理屈っぽい男はうるさいほど喋り倒した挙句切れたまま、ということが多いと思うのですが、フレッドは意外と相手の言うことを受け入れ、反省すべきところはちゃんと反省します。
だから相手も彼を見捨てることなく、その後も付き合ってくれます。捲し立てたり反省したりと激しさと穏やかさを行きつ戻りつしながらの会話が多いので、政治思想(共和か民主か)、人種差別、宗教観などの際どい会話が展開していく中でも、違和感や不快感を覚えることなく、それでいて私のようにアメリカ固有の文化的背景に詳しくないものでも、ある程度の理解ができてテンポの良さを感じながら鑑賞できます。脚本がとても上手なのですね、きっと。
昨年、スウェーデンの環境活動家(という肩書きが正しいのかどうかよくわかりませんが)グレタ・トゥーンベリさんという16〜17歳くらいの少女が世界的に話題になりました。この映画は製作サイドが意識していたかどうか分かりませんが、そのグレタさんが今の世界の政治リーダーたちを見たらどう思うか、その視点から作られたように感じられます。そういえば、外遊先の最初の国もスウェーデンだったような。
オトナの人たちは、殆どのひとが何十年も生きてきたのだから、嘘をついたり、隠さなければ困るような、やましいことをそれなりに抱えているのは寧ろ当然なので、そんなに恥じることはない。
だから、ためらわないで❗️
今、大事なことのために何をすべきか?
15〜17歳の頃に見ていた純粋な夢や希望を思い出して‼️
世の中どこを見ても、FAKE!FAKE!FAKE!
ウソを隠すためにまたウソをつくのはもうウンザリ。
そんな感じに溜まっているストレスを発散するための『それなりに上手に生きてきたけれど、疲れてしまったオトナたち』にひとときのカタルシスを与えてくれる映画、そんなちょっとしたカウンセリングのような作品だと思います。