劇場公開日 2018年3月1日

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「世界を善くするにはたった一つの思いだけでよい」15時17分、パリ行き nanaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界を善くするにはたった一つの思いだけでよい

2020年1月2日
PCから投稿

珍しく泣いた映画。

咄嗟の行動を起こした、普通の人間たち、むしろ落第続きの人生でどちらかといえば負け組と言われる人間たちの、ヒーロー物語。

結末は知っていたから結末自体は驚きはしなかった。
しかし、結末を知っていたからこそ、先生や母親に怒られっぱなしの少年の、「私を平和の使いにしてください。この世界をよくしてください」と1人で祈る夜のシーンには涙なしには見られなかった。

どこにでもいる、誰ともとくに違わない人生を送ってきた普通の若者たちが、人を助けるために迷いを見せることもなく咄嗟に行動できた瞬間には感動する。
3人のうち2人が訓練を受けた軍人であったことは示唆的ではあるが、やはり力は善い行いにのみ使われるべきなのであり、また善い行いには力もまた必要なことも事実であろう。しかしこの映画の本質はそこではない。人間たちそれぞれの普通の人生、普通の力、普通の倫理観が、ある瞬間には人をヒーローにさせるということなのである。

「善い行い」をするためには、優れた業績や崇高な哲学などは必要なく、「この世界をよくしてください、そのために私は役に立ちたい」という、人間ならば誰でもが持っている素朴な願いだけでよいということを、ストレートに世界へ知らしめてくれるとても心を揺さぶられる映画だと思う。

「戦争はなぜ起こるのか」「なぜ人を殺す人がいるのか」と子供時代に不思議に思わなかった大人はいないであろう。
ほとんどの大人はそんな疑問や善い行いへの夢などはいつの間にか忘れてしまうものであり、しかし世界を善くするにはそれだけでよいのである。

nana