「それ宣伝文句にしちゃダメだよ」(r)adius ラディウス ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
それ宣伝文句にしちゃダメだよ
男が道端で目覚めると、なぜか記憶を失っているようだった。
なぜか飛んでいた鳥が落ちてくる。
通りがかる車に助けを求める。すると、車は急に脇道へと逸れて停止した。
運転手はなぜか、死んでいた。つい今まで運転していたはずなのに。
カフェへ立ち寄ってみる。店の人間は全て死んでいた。まだ死んで間もないようだった。
とりあえず自分の身分証に記載してある住所へ。
未知のウイルスかも知れない。外にいる農夫へ注意を呼びかける。農夫はこちらへ近付いてくるやいなや、息絶えてしまった。
ちくしょう、一体何が起こっているってんだ!
そんな、記憶喪失のあなたに朗報です。
youの15m圏内に入った生物はみんな死ぬらしいよ。
いやいや、マジ。本当だって。信じてよ。
だって…
パッケージにそう書いてあるもん。
はい、お疲れ様でした。
やっと気付いてくれたね。30分ぐらい待ったよ。
でも、何でそうなったんだろうね。
後で分かる?
そっか、よっぽどすごい事態に巻き込まれたんだね。軍の人体実験かな?
え!?君は殺人鬼だったのか!
とても驚いたよ。そんなどんでん返しがあったとは。
すごい脚本だ!
…えっと、ですね…
…人が即死する設定、いる?
いや、分かるよ!そこからアイデアを膨らませていったんだよね!たぶん一番最初に思いついて、チラシの裏とかに走り書きしたヤツなんだよね!
で、それから「でもなあ〜これで話持つか?いや、持たねーな。
よしっ!じゃあ主人公を記憶失くした殺人鬼にしよ!
これで映画一本分の長さになるぞ!」
みたいなね、事なんでしょ!
この欲張りさんめー!
…うん。
それぞれがね、単体だと、ものすごく面白いアイデアだと思うんですよ。
ただね、配給会社がマイナーな映画をなんとか宣伝しようと必死だったのか、監督らが始めからそういう売り文句でやりたかったのか知らないですけど、この宣伝方法は完全に失敗だと思います。
せっかく怖い演出で、意味ありげに謎を盛り上げてるのに、すでに観客が答え分かってちゃダメでしょう。
おかげで、冒頭の大部分がムダですよ。
あとは主人公の正体で引っ張りますけど、まず変な能力についての話のオチに引っかかったままなんです。しつこいくらい繰り返される回想も、なんかただしっちゃかめっちゃかな印象だけを受けちゃって、すごく鈍臭い話運びに感じました。
演出は上手いのに、ただただ、もったいないという気持ちになる作品でした。
映画あるある : 雷で変な能力持ちがち。