ハッピーエンドのレビュー・感想・評価
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コミュニケーションの不可能性
ひとつの家族の物語であるが、それぞれがバラバラで気持ちがつうじあっていないので、まるで群像劇を観ているような気分になる。家族は人が生きるうえで最小単位の共同体であるはずだが、本作ではそれすら満足に維持できていない。
本作の舞台は移民・難民問題に揺れるカレーという街だが、移民問題は遠景として登場するのみ。それよりも小さな単位の共同体の家族にもっぱらフォーカスしている。そしてその家族が壊れている。複雑な問題をたくさん抱える欧州だが、コミュニケーションの不可能性は、家族にまで及んでいる、あるいはコミュニケーション可能だという幻想がここまで剥がれ落ちているのだとすれば、移民や多文化の共生など考えうるのか、もはや現代人はそれ以前の問題に直面しているのではと思わせる。
イザベル・ユペールとジャン=ルイ・トランティニャンは相変わらず素晴らしいが、本作は子役のファンティーヌ・アルドゥアンの存在感がひときわ光った。新しいスター俳優の誕生かもしれない。
会話エロチャ会話、終始居心地の悪さ。
結構早い段階でこの家庭終わってんなって気づく。あとはその家庭がずーーーっと映し出される。なんだかんだで死が身近な存在の中学1年生エヴちゃんは、メンヘラぶってハムスター殺めた様子をSNSにあげちゃったり、臨海学校で自分が薬を盛った友達が卒倒して後悔はしちゃう可愛げがある。ただ意図的に整った顔の接写や長回しを結構な時間観客は観ることになるから、ちゃんとこの子役を売り出そうとしてるなって感じが少しくどい。
冒頭のシーンとかでエヴが死をiPhoneのカメラ越しで見るのは何故か。
祖父ジョルジュとの告白合戦でしっかり理由は分かるよ。
あとロラン家の家庭が終わってる原因は大体叔母のアンヌのせい。人の心が分からないのに母親面、家族の大黒柱面はしたがる周りにいて欲しくないタイプの人間。
そら息子も変人ぶりだす。
アンヌの息子は圧倒的閉鎖空間の富裕白人達の社交場で「わざと」家に仕えているモロッコ系の使用人に注目集めさせたり、その辺で拾ってきた移民のアフリカ系にその場の視線を集めるという地獄みたいな行為をします。あとエヴの父親トマとチェロ奏者のババアの生々しい中年放尿地獄エロチャットもみれます(娘にバレるというおまけ付き)。つまりハネケ的地獄をしっかり味わえます。
なんだかんだで結構面白い映画だった
死への尊重
個人評価:3.7
85歳の老人と、13歳の少女の個人的な想いに寄り添った物語。
生き方は他者の価値観ではなく自分で決める。生きた年数は違っても、少女と老人の想いが交差する。それが見る側に違った角度の価値観を教えてくれる。推奨はしていないと思うが、それぞれの死への尊重が感じられ、名匠ミヒャエル・ハネケの深いテーマを感じる。
皮肉たっぷりの題
上品で優雅な雰囲気を覆すミヒャエル・ハネケの突拍子もない変態性、登場人物が続々と混乱しそうになりながらもユックリと落ち着いた時間が流れる物語から理解できる演出描写、場面が切り替わる唐突さで起こる出来事が小まめに散らばり全く読めない展開が最後まで、テンポが良い訳では無いながらの勢いは止まらない。
どうであれ父親の弱みを握った娘はある意味で優越感に浸れそうな、何も知らない今の奥さんに対して憐れんでも良さそうで、赤ちゃんを抱く場面は勝手に想像してしまい怖くなり、父親が赤ちゃんと関わることも奥さんとの場面すら少なくてそこを中心にすら描かないのは観ていて気掛かりになる。
イザベル・ユペールがすれ違い様に振り返り一瞬だけ見つめる場面に旋律が走り、話の展開がもっと面白くなる期待と共に映画は勝手に終わってしまう意表を突く斬新さ!?
【砂上の楼閣に住む、壊れたコミュニケーション不全家族の姿を辛辣に描く。ミヒャエル・ハネケ監督の”イヤナ気分になる”テイストが、やや復活した作品。】
ー ロラン家は、瀟洒な邸宅に3世帯が暮らす、一見何の問題もない”家族”である。
が、その実態は・・。ー
◆感想<内容に触れています。>
・ロラン家の⻑、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、建築家業を退き、娘アンヌ(イザベル・ユペール)に全てを任せている”フリ”をしている。
アンヌはやり手だが、取引先銀⾏の顧問弁護⼠ローレンス(トビー・ジョーンズ)を恋⼈にしている。
・アンヌの息⼦ピエール(フランツ・ロゴフスキ)は専務に就くが、やる気がない。移民問題には、問題意識アリ。
・ジョルジュの息子トマ(マチュー・カソヴィッツ)は家業を継がず、医師として働き、先妻との間に生れた娘エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)と再婚した若い妻アナイス(ローラ・ファーリンデン)との間に幼い息子ポールがいる。
だが、トマは妻子が居ながらも、恋人と卑猥なチャットをする日々・・。
そんな父の姿を見て、エヴは呟く・・。”パパが遠い”と・・。
ー とまあ、ここまでで、ロラン家が、一家の態を成していない事が、良く分かる。
そして、愚かしき父親の行為(妻との離婚、チャット・・)で傷ついているエヴは、自殺を図る。ー
◼️ 一家の長、ジョルジュは、そんな愚かな家族の姿と、つい最近存在を知った孫娘エヴの、哀しき悩みに気付き、長年誰にも話してこなかった”秘密”を、”自分と同じ匂いのする”エヴに告げる・・。
エヴも同じく”秘密”を告げる。そして・・。
<前作、『愛、アムール』で、まさかの老夫婦の愛を真摯に描いたミヒャエル・ハネケ監督。(感動したけどね。)
今作では、御大の、本来の持ち味である”いやーな感じのする、後味の悪い作品”が戻って来た・・。>
SNS社会の風刺もあり
SNSと裕福層の家族を描いたもの。最後に孫が祖父を海岸に連れて行き、そのまま放置して、SNSで流している様はシュール。
裕福層にありがちなプライドと閉じた狭い家族の関係性を描く。
主人公の子がクールでエロい あの年齢で つんつんした感じがほんとに...
主人公の子がクールでエロい
あの年齢で
つんつんした感じがほんとに魅力的。
おじいちゃんが
闘病中の妻を縄で首絞めて殺した感情はなんか
わかる
あと、主人公の子が、父親に対して、
パパが遠い
って言った
その一言、うまいなとおもった。
一丁上がり!
冒頭のエヴが撮ったと思われる携帯動画がえげつない。日常を撮るだけならいいのだが、ハムスターに母親が服用している抗うつ剤を与えるとは・・・ちとショッキング。そして本編が始まっても、建設現場での地滑り崩落映像。凄すぎる序盤の展開だ。
裕福な家庭でありながら、移民の使用人に対する無関心さ。家族の食事においても、無関心さが際立っていた。アンヌの弟で医者のトマがとにかく変態。一度関係を持った女性と変態プレイのチャットを続けているのだ。それを盗み見てしまった娘のエヴ。父親にも今の妻を愛してるかどうか問い詰めたりするところが凄い。
アンヌの息子も問題を起こすが、彼だけ心情が掴みづらい。何不自由なく育った坊ちゃんだからなんだろうけど、甘やかしすぎだったのだろうか・・・。それでも彼だけは移民に対する姿勢がはっきりしてた。ラストの海辺のパーティ。この海辺での車いすのじいちゃんとエヴとのやりとりが強烈だった。
自分しか関心がない家族
フランスの上流家庭、祖父(ジャン=ルイ・トランティニャン)は会社を長女(イザベル・ユペール)に譲り引退しているが認知症が出始めている。
長男は医者、前妻との娘を引き取るが、この娘はちょっと怖い。
長女の息子は会社を手伝っているが、向いてないことは長女もわかっている。
この三世代家族はみんな自分にしか興味がないようだ。
皮肉なエンディング
富裕層の家族だが、心はみんなバラバラで、冷え切っている。うわべでは取り繕っているが、子どもがパソコンのチャットや、スマホを使いこなしながら、本当は冷え切っていることが露わになっていく様子が、見ていて、辛いと思った。エンディングも、皮肉たっぷりであった。現実にも、ありそうだから、笑えない。
SiaのChandelierカラオケ
ハネケ監督作品は初鑑賞だったが、徹頭徹尾意地が悪い。画面に常に不穏な空気が漂っていて、たまに本当にひどいことが起こるので、こちらまでジリジリと焦らされる。そして何ともバラッバラなこの家族。『万引き家族』や『リトル・ミス・サンシャイン』の後だけに余計に寒々しくなる。
カラオケシーンは下手くそすぎて最初は何だかわからなかったが…。
現代社会への絶望をぶちまけた超傑作
「白いリボン」と「愛、アムール」でカンヌを制したミヒャエル・ハネケの新作。今作はカンヌで無冠だったのであまり期待していなかったが、やはりハネケだった。
崩壊する家族を通じて現代社会への絶望をぶちまけた超傑作。そして何より好きな作品。冷たくも美しいベストワン候補だ。
ぜひぜひ多くの方に観ていただきたい。
更に多重構造になった不穏
ハネケさんの映画がハッピーエンドだなんてそんなー。
って感じで観まして、まーそーだよね、ハネケさんだもんね!って感じで観終わった訳なんですが、思った事もちょこちょこあったんで、書きます。
・ハネケ作品特有の不穏さが、現代と交ざって出来た構造感。
これまでの作品にあった、登場人物達の表情からは解らない深層心理部分ですが、今回はプラスでインターネット上のキャラクターまで重なり、キャラクターの心理を追うのが更に複雑になりましたね。
社会や環境に合わせて繕った表の顔と、内面で何を考えているか解らない、静かな恐怖が監督の特徴ですが、SNSなどインターネット上での人物像がまた別の「顔」として使われた事により、更に多角的な構造の映画となりました。
それにより、今作を観た人達は一人ひとり自身の個性に富んだ感想を得られるようになったように感じます。すげぇやハネケ!
その辺の多重構造はたぶんハネケさんの狙ったポイントなんだと思います。
と、言うのも今回の作品のパーツ一つひとつが、とてもイビツな多重構造なものから出来上がってるからって訳です。
・いろんなイビツな多重構造。
まずは、さっきから書いている、表面、内面、SNSの三点構造。
元々ハネケ作品自体が、表面と内面をそれぞれ読みといて、ようやく理解したよーな、してないよーな……。って作風なんで、二重構造的な作風ではあったんですが、SNS上のキャラクター性まで盛り込む感じ、これSNSとか署名掲示板とかやってない世代には理解出来ない人格みたいな部分だと思います。そんなものまで理解しちゃうなんて、やっぱ凄いねハネケ!!
それから、家族の部分。
複数の世帯が暮らすお屋敷と、それぞれの家庭事情がとてもイビツに描かれています。
家。
主人公の女の子が住んでた家が二つの家を無理矢理重ねて作った的な台詞があります。隠喩ってヤツですね。
ぶっちゃけいらないかなーとも思った部分なんですが、あの不親切で有名な監督が、もしかしたらとても親切なヒントとして言葉として入れてくれたのかもしれないですね!丸くなったねハネケ!!!
カレーの街。
なんだか移民で大変みたい!大変だねハネケ!!!!
・んでもって感想。
感想としては、映像の色彩も爽やかで台詞も多め、感情をあえて逆撫でするいつもの騒音も若干少なめ、上で書いた三重構造のおかけでなのか解らないが三点から人物像を見れるので、今までよりも断然観やすいハネケ作品になったかもしんないです。
そこは良いとことして、ハネケ作品としてのズッシリした気持ち悪さは今回すこし薄味だったかもですね。
白いリボンのような強烈さはなかったです。
今回とても観やすかったからか、はたまた淘汰された上での選ばれしハネケストしかもはや観ていないのか、パッとレビュー見た感じいつもより星が多い気がする。考えすぎか??
そんな感じです!!
絶望的な家族の話
タイトルが皮肉すぎて、エンドロールで固まった。
仮面ブルジョワ家族をこんなにも絶望的で、馬鹿馬鹿しいものに描いたのはハネケらしい。
家族の中で疎外された存在である、少女と年老いた祖父だけが直感的で人間臭く、なんとかこの物語に希望を見出すことが出来る。
想いの一方通行
『愛、アムール』では今ひとつピンとこなかったのですが、本作では十分楽しめました。
特に目を惹いたのは撮影技術で、音使いもよかったです。
その他も隙が無く、色々なことが起こりつつも、ほどよい緊張感でまとまっていました。
それでも作品の芯を捉えた感触はなく、ハネケ作品が好きと言いきれずにいます。
もどかしいのですが、いずれ理解が深まるといいな。
今後も楽しみです。
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