「NO NAME」モダン・ラブ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
NO NAME
作中に出る、謎の惑星『エマノン』、逆綴りで、未名称ということだ。まぁ、それと今作との関連性は無いとは思うのだが。。。
本作の監督は約8年ぶりの長編制作だそうだ。実は、以前、前作品の『レガシータイム』は拝観済である。その時の色々な解釈を、同じ作品を観た人と語り合いたい衝動に駆られ、生まれて初めて近くに着席していた女性をナンパした記憶が甦った。勿論、断られたけど(苦笑 全く苦い現実である。
その監督の今作も、ロックとSF、そして都会の男女の“Love”を煮染めて作った内容である。
実は、相当哲学的なテーマが隠されている(※多分、マーフィーの法則?)のだろうけど、相変わらずそれを紐解けない、難解さは健在である。
しかし、それ以上に今作の表のアイデアである『パラレルワールド』、『デジャビュ』、『ドッペルゲンガー』等の、所謂垢のついた超常現象を、奇を衒わず使ったことの勇気は拍手である。しかし、如何せん演出が・・・この手の使い古されたトリガーは、それこそきちんと丁寧に作り込まなければ、ドリフのコントの如く興ざめしてしまう。同じ画面に、同一人物が2人以上出てくれば、その間の台詞は全て一人であり、その演技もまた然り。対応しているお互いの目線が合わないなんてのはそれだけでこの摩訶不思議さがガラガラと音を立てて崩れる。その丁寧さが欠けていたのは、前作にはない、緻密さの欠如なのではないだろうか。非常に残念である。
主人公のヌードが無いのに、安っぽい濡れ場シーン立ったり、前作には無かったダメな部分が今回露呈されているようで、かなり勿体ないと感じてしまった。後半の、謎の国『アガルタ』の設定となっているロケ地のスペイン・カタルーニャ州の件も、正直、冗長さが拭えない。その前のシークエンスの『ループ』があまりにもしつこすぎて、その先を見続けるには余りにも疲労感を払拭できないからである。
ま、とにかく、監督がやりたかったテーマを全部ぶち込んだということなので、そのアイデアをパッチワークのように紡いだというのが本作なのであろう。実際、商業映画を作成した経験があるのか不明だが、かなり監督の強いアクしか感じられない作品でもある。
カメラワーク、アングル等、まるでユニクロのCMのような洗練さは如実に溢れているのだが、そのギャップも特出すべき点なのだろうとは思う。