「手錠」フィフティ・シェイズ・フリード U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
手錠
女性の欲望がギュギュッと詰まった映画だと思う。男性目線からすると、もうお腹いっぱいだ。キャラ設定もそうだし、展開もそうだし、どこを取っても女性本位だ。
大富豪の旦那様
満たされたSEX
海外旅行、別荘
一途な愛
寛容で味方な義母
社会的地位、仕事を続けられる事
受胎、出産
夫への精神的な優位性
…いゃぁ、欲望が炸裂しまくってる!
男目線からすると、何故こんな内容が世界的なベストセラーなんだろうと首を傾げるが、女性からすると直球ど真ん中なのだろう。
そして、女性の欲望のかくも現実的な傾向に恐れおののく。
それぞれを体験や獲得している人はいるだろう。ただ、これら全てを持ってる女性は奇跡とも思える。
そう、あり得ない事柄ではないのだ。
1つ1つは現実味があるが、それら全てとなると途端に幻想になる。
いわゆる…
「理論上では可能だが、物理的に不可能」
のような類いなのである。
作品の中の彼女は、100%の避妊方法を知りながら、自分のミスで妊娠してしまう。
それを告白され、ぶちキレる夫。
夫にはトラウマがあり「子供を作りたくない」というのは夫婦共通の認識だ。
その夜、夫は帰らない。
泥酔し帰ってきた夫の携帯に元カノから「楽しかったわ」のメール。
激昂する主人公。
誤解だと弁明する夫を罵り倒す。
全く信用しようともしない。
遂には「私に寂しい想いをさせた貴方が悪い」的な事を言い出す。
いやいや、元はと言えば妊娠が事の発端だろうと。それは裏切りと捉えられても仕方がないくらいの事だぞ、と、男の俺は思う。
もう遥か彼方へ棚上げで上書きだ!
そんな中事件が起こって、それどころじゃない的な状況が作られ、事件が解決した時には「君を失いたくはない」と夫からの敗北宣言。
またまたガッツリ上書きだ!
「ようやく分かってくれたのね、貴方はきっといい父親になれるわよ」的な勝利宣言。
これまでの流れの中のどこに相互理解があるのだろう?何の会話をしたのだろう?
エンディングはリフォームされた邸宅で、家族3人の笑顔と、更に子供を身籠もる主人公。
「ね、私の言った事は何一つ間違ってなかったでしょ?」的な未来…。
最早、モンスターだ。
あなたは一体何を男に求めているのだろう?
思い通りに君臨する世界?
男性は変わっていったよ、あなたのせいで。
でも、あなたは何か変えた?
その愛情が俺には手錠や洗脳に見える。
怖い怖い。
あなたは愛情を人質にして神にでもなるつもりなのだろうか?
随分と一方通行なお話だとは思うのだが、この男性社会においては、女性の為だけのこおいう作品は、なくてはならないとは思う。
女性の闇を垣間見たような気もするが、その闇を産み落としてるのは、間違いなく男性側の身勝手だとも思うので。
それでもこれが支持され世界的なベストセラーである事に「ごめんなさい」とも思うのだが…これらの欲求を全て満たしてやる事に情熱を注げないし、際限なく増長していくようにも思え、恐怖すら感じる。いや…謹んで辞退したい。愛なんて要らないから、俺を自由にしてくれと反発したい。
夢のあるお伽話ではなく…。
欲望の集大成以外の何物でもないと思う。
SとMであるところの「S」の真意はServiceの「S」であると納得した。
Mである女性を悦ばせたい、のである。