マッドバウンド 哀しき友情のレビュー・感想・評価
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差別は観念的に、友情は具体的に
ディー・リース監督は、これからの活躍に期待している作家の1人。舞台は40年代のミシシッピ州。黒人差別が色濃く残る時代の白人の兄弟一家と黒人一家の交流と諍いを描いている。白人兄弟の兄は粗野な性格で父から受け継いだ差別意識を引きずっている。弟の方は、兄ほど差別的ではなく、頭もよかった。弟は戦場で黒人兵に助けられたこともあり、黒人一家の元兵士と友情を築いていく。ともに欧州戦線で戦い、黒人の青年は現地での歓迎ムードが忘れられない。一方、故郷のミシシッピでは差別される。PTSDを発症した白人兄弟の弟は、その苦しみを周囲に理解されず、同じ戦場で戦った黒人青年だけがその苦しみを理解してくれた。
白人兄弟の兄の妻は、子どもが病気で苦しんでいた時に黒人一家の妻に助けてもらう。そんなこんなで家族のメンバーの一部は寄り添うが、地域の差別感情によって引き裂かれていく。
差別は観念的に生まれ、友情は具体的な体験の共有から生まれる。アメリカの黒人差別を背景にした作品だが、全ての人間関係に通じるものを描いている。
やはりこのテーマは重過ぎる
キャリー・マリガン推し必見
お互いがセラピストに。
一気に見終えた私好みの大作だった。 本で読もうかと思ったが、映画で観るほうが速いと単純に思った。意味の深い言葉を使ってるので、本の方が何度も読み返して感激できるなあと思った。娘は本を読んでいる。
この映画で好きだったところを記録として残す。それはジェイミー(ギャレット・ヘドランド)
とロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)の友情。 二人がお互いに傷を舐め合いながら友情を深めていくシーン。
第2次世界大戦で空軍パイロット(B-25ミッチェル)として従軍していたヘンリーの弟ジェイミーと、陸軍戦車大隊軍曹としてベルギーで従軍したジャクソン家の長男ロンゼルが帰郷してくる。
場所はミシシッピ州デルタで、ジャクソンの家族は小作人で、ジェイミーの兄は地主(?じゃない)とでも言おうか? ジェイミーは第二次大戦にパイロットとしていく前は、明るく、誰にでも好かれそうなその当時の現代っ子だったが、ヨーロッパ線から戻ると、人が変わったように、酒に溺れ、PTSDで悩んんでいる。当時は、PTSDであることは村人にも明らかにわかるようだったが、治療の方法なんてなかったから、ますます、深酒をするようになり、自動車事故も起こすようになる。彼は戦争体験によって人がまるっきり変わってしまった。 しかし、この田舎はそのまま。 また、ロンゼルは帰郷の足で、小売店により、家族の好きなものを土産に買って、表口から出ようとすると、ヘンリーの家族に裏口から出ろと言われる。 軍隊はすでに、1948年にトルーマン大統領の命令で黒人白人はいっしょに働くことになっている。でも、故郷は全く、変化を見せず、そのまま、ジムクロウ法律が生きていて、白人と有色人種はまじ合うことがない。ベルギーでは白人のガールフレンドと共に生活をしていて、彼は彼女といっしょにいられた。でも、故郷では白人と話すこともままならない。戦争の功績の代償が差別か? ちっとも変わっていない故郷に家族の意識の低さに閉口したくなる。
そこで、PTSDで路上に倒れているジェイミーにロンゼルは手を貸す。これが、二人を結びつける。ジェイミーもロンゼルも心に障害を抱えてしまっているし、このジレンマを解決することができない。この二人は接近していく。この故郷では接近することは危険だとわかっているから、人がこないところであったり、車の中でいっしょにいるところを見つかりたくないので、隠れる。
ある日、ロンゼルはジェイミーに、なぜ、自分にやさしいのか聞く。
ジェイミーは戦争中、他の黒人パイロットに助けられた話をする。
この二人の会話はお互いがセラピストになって、心理的に助け合っている。 人種や故郷での生活様式は違うが、傷ついた心の中を出し合って、理解し会えるのは貴重なのだ。二人はすでに、人種の壁を超えているんだ。現実の社会に向き合っていないかもしれないが、まず、二人がどうこれから生きていけるかを考えるにあたって、この語りはお互いにポジティブに作用するはずだ。しかし、そうは問屋が卸さなかった。
白人の傲慢な歴史は根深く続く
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