「夢の続き」ピンカートンに会いにいく たら印さんの映画レビュー(感想・評価)
夢の続き
メディアで取り上げられ誰もが知っているあれより、あまり知られてないけどこっちのほうが良いよね。
でも、こっちより更にそっちの方が良いよね。
映画、音楽、書籍、ジャンルを問わず、そうして進んでいった先はほとんど周囲に知っている人いない世界の端の端だ。
才能や実力に関係なく世界の端から中心で輝けるようになるは極々わずか、ほんの一握りのものでしかない。
世界はまだまだこの先を見たいと思わせられる途中で途切れた夢であふれている。
そんな世の理も理解していなかったあの頃の私たちにとって世界は毒を吐く対象でしかない。
『ピンカートンに会いにいく』はそんな世界の端から中心に踊り出ようとしていた瞬間に解散したアイドルグループ“ピンカートン”の20年後の物語だ。
リーダーだった神崎優子はグループ解散後もコールセンターで働きながら細々と芸能活動を続けていた。
そんな優子にかつてピンカートンのファンだったいうレコード会社の松本からピンカートン再結成の話を持ちかけられる。
2人は再結成のためにメンバーの元を訪れるが、一番人気のあった葵の消息がつかめず…。
ピンカートンのメンバーと松本は映画の後どうなっていくのでしょう?
再結成後の活動は続くのか、元の生活に戻っていくのか。
どちらにしても、20年前に止まっていた時間が動きだしているわけですから、以前とは世界が違って見えているはず。
かつての夢を諦められず、それでも頑張り続けるという映画は多かったけれど、『ピンカートンに会いにいく』はその先を見せてくれることに胸を打ちます。
世界にあふれている途切れた夢は、当事者だけではなくかつてファンだった私たちにもその先見れるかもしれない可能性あるんだよと。
この映画が一番ささるのはピンカートンメンバーと同じく夢をあきらめきれずに頑張っているアラフォー世代かもしれません。
でも、タイムマシンで過去に戻ってかつて世界の端から毒を吐いていた自分に、
今、世界の端から毒を吐いている若い人達に
たとえ今の夢が一度は途切れても未来はそんなに捨てたものじゃないんだよと観せて伝えてあげたい。そんな映画でした。
夢をあきらめられない奴がもう一人いた、って知った時(喫茶店)の優子のうれしさと、クソ野郎に媚びてでも続ける同志感。
私は再結成で夢をあきらめる区切りになったのかも、って気持ちと、続けていればいいことある、って気持ちと、まだまだ夢にしがみついてほしい気持ち、いろいろでした。