「結晶」カメラを止めるな! U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
結晶
素晴らしい。
情熱の源泉を見てるようだった。
映像も荒く、このクオリティを劇場の大画面で見せられる嫌悪感を感じはするものの、そんなものは直ぐに吹っ飛ぶ。
冒頭の「ワンカットオブザデッド」にまず驚かされる。37分1カット…それがどれほどの事なのか、映画に関わってる人間からすると奇跡を目の当たりにしてるかのようだ。
台詞が飛んだら撮り直し。
スタッフが見切れたら撮り直し。
段取りを間違えたら勿論撮り直し。
どれほどのRHを重ねたのか検討もつかない。
役者にもスタッフにも、尋常じゃない集中力が要求される。
今作はそんな撮影を踏み台にして話が続く。
いわゆる「裏側」を含め1本の作品として成立してる。映画を作る上での葛藤や情熱、大人の事情などふんだんに取り入れてある。
撮影中のアクシデントをエピソードとして採用した部分もあったであろうが、非常によく出来てた。つい、笑みがこぼれてしまう。
2部構成になるのだろうが、どちらかというと一粒で二度美味しい印象だ。
伏線の回収も含め、ホロっと来るとこもありツボを外さない作り方も好印象。
「カット!」の声がかかった後の皆の顔が印象的だった。
故・深作欣二監督の言葉に
「映画は一生懸命撮るようなもんじゃない。一心不乱に撮るもんだ。」という言葉がある。
本作でその言葉を思い出した。
37分1カット。
その達成感と解放感は格別なものであったろう。
本編中にも「無謀な企画」とあったが、生中継は無いにしろ、実際無謀な事この上ない。だけど、テレビの放送開始当初は30分のドラマを実際に生放送でしてたとの話もある。
引き返せない。
やり直せない。
真っ直ぐ、ただただ強引にでも前に進む情熱が原動力。
羨ましいくらいに眩しい作品だった。
作品の趣旨とは異なるのだろうが、ラストに近づくにつれ自然と顔がほころんでしまう。
カメラを止めるな。
それと同時に、情熱も止められない。
その情熱に惜しみない喝采を送りたい。