「「出すんじゃない、出るんだよ」」カメラを止めるな! いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「出すんじゃない、出るんだよ」
評論家やお笑い芸人が絶賛している今作品、相当斜めに逝っているということで自分も鑑賞してみた。
結果的に言うと、大変面白い、そして相当手の込んだメタ映画である。なにせ入れ籠構造が3層になっているところがその複雑さを表現している。かといってそれ程ストーリー内容は複雑ではない。
ある監督がテレビ局の発注で、『ゾンビもの』『生中継』『ワンカット』という条件のドラマを作るというストーリーなのだが、まるで長い長いアヴァンタイトルを観るように、冒頭でその番組が流れる。そして、その前述談として、ドラマの制作現場が種明かしの如く描かれるという、シチュエーションコメディドラマである。
この構成が秀逸なのは、その冒頭のドラマのお粗末さ、滑稽さ、しかし必死な程の演出に、数多くの疑問を投げかけてくるのだ。唐突と不自然さ、そして演技の酷さや、演出の瓦解、そんな正に浮き足立ってる映像をみせつけられる。ゾンビものなので、ホラーだ。ホラーは怖がらせなければならない。よりシリアスを求められる空気に、しかしそぐわないちぐはぐさが不穏な空気を充満させる。しかしその裏では、正に抱腹絶倒のコメディがパラレルに同時進行していたのだ。勿論フィクションだから、ご都合主義も甚だしいが、しかしここまで徹頭徹尾にやり切ると、いっそそれがナチュラルに感じられるのが不思議である。テレビ局や芸能人のあるあるネタも存分にぶち込まれ、それがきちんとストーリーに意味を持たせている。そう、キチンと伏線が回収されている、身だしなみの綺麗な作品である。そしてラストの一寸ハートウォーミングなシーンもなかなか心憎い。組体操のピラミッドが壊れる毎に、一連のシーンの繰り返しでやり過ごすことや、最後の肩車は、小さい頃の思い出を再現させ、そして親子の再生を彷彿させたりと、なかなかの策士な監督である。護身術の『ポン』もギャグとして冴えているし、それをネタバレさせての繰り返しに、まるでコントの作りと同一なのだ。
邦画の一つの可能性、未来の一端を垣間見た良作である。海外にも積極的に上映しているとのこと、今作品は世界の人達にも理解出来、笑いを届けることが出来るのではないだろうか。演技のレベルをボリュームのツマミのように繊細なバランスで演じきった役者陣の力量にも感激である。リメイクのオファーがあるじゃないかと想像出来る内容であった。