愛の病のレビュー・感想・評価
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悪魔に魂を売ってはいけません
♪お金をだしな♪の劇中歌がしつこい位に歌われるかなり異質の作品。園子温監督からだと思うが(勿論それ以外にも過去にもこの種の作品は存在しているが)、実際の猟奇的、又は理解不能の事件をモチーフに独自のアプローチでストーリーを仕立てるプロットの作品は、『小説よりも奇なり』の諺を地のままに観客の興味を擽る。それは作品名一つとっても、キャッチーで心を掴むような秀逸さである。今作もその内の一つであろう。宣伝のキャッチコピーでも用いられていることからも積極的に乗っかっているフシもみられる。
ただ、今作残念ながら表層的な展開をなぞっているようにしか観られない。キャスティングは岡山天音等、配役がピッタリとは思わせるが、細かい人物描写や経歴、人物像みたいなものがあまりにも端折られすぎていて、深みが全く感じられない。編集の性なのか、それともプロデューサーの意向なのか分からないが、その辺りの説明が浅すぎなせいか、ストーリーに没入させてくれない。それだから、唐突に主人公の女が声真似や態度の急変みたいな演技がギャグとして捉えがちになってしまう。もし意図していたものならば、誰も笑っていない観客を観れば、スベッていることは明らかである。その特異な事件性の核と成す、『盲目的な主従関係』というテーマを、もっと奥深く突っ込んで貰いたかったと、それが観ている客、少なくても自分は期待していた。元々の性格や環境、それが起因での偶然や運命、その辺りの丁寧さがカタルシスを得られるキモではないかと思うのだが・・・
主人公のファムファタールとしての存在感、そこに行き着く迄の苛烈な人生、そういう部分をドラマティックに作り上げてくれたらと思案するばかりである。兄弟夫婦や、脳梗塞で寝たきりになった父親の欲情のシーンは、蛇足であると思ったのは自分だけだろうか・・・
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