「日本の10年後の重苦しい空気感」十年 Ten Years Japan ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の10年後の重苦しい空気感
香港映画に端を発するアジア各国による10年後を考えるプロジェクトの日本版だが、良くも悪くも今の日本らしさが出ている作品になった。
それぞれの物語が掲げたテーマはどれも今日的だが、そこに明るい展望はない。若い監督は多く参加しているのだが、日本の未来に対して悲観的な展望ばかりなのは気になる。そして問題解決に向けたパワーも感じない。それよりもそれぞれの諸問題に対しての無力感やどうすればよいのかという戸惑いが強く出ている。
個人的には超高齢化社会が日本の最優先課題だと思っているので、早川千絵監督の「PLAN75」が最も重い課題を投げていると思う。全体のために一部を切り捨てねばならない時、いかなる倫理観でそれを実行するのか、経済規模も縮小し続ける日本においては、高齢化以外の問題でもこうした取捨選択を次々と迫られることだろう。そんな時、我々はどうすればいいのか。民主主義はそれを解決できるのか、そこまで描ける題材だと思う。
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