「多分何度観ても面白い」ザ・フォーリナー 復讐者 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
多分何度観ても面白い
ロンドンは街中に監視カメラが設置されていることで有名である。かつては有能だと評判だったスコットランドヤードも、今では監視カメラだけが頼りだ。ダニエル・クレイグの「007スペクター」でも、当局がボンドを追うのに専ら監視カメラ網を使っていた。
さて本作品でもジャッキー・チェンは健在である。爆弾テロの被害に遭った娘の無念を晴らすために、警察当局に迫り、そしてアイルランドの過激派の中枢に迫っていく。監視カメラの目をくぐり抜け、イギリスとアイルランドの政治的な力関係から真実につながる糸を手繰り寄せる。一介の中華料理店の店主がどうしてそれほどの洞察力を持ち得たのか、物語の中で徐々に明らかになる。
ストーリーはテンポよく展開し、プチどんでん返しなどもあって、観ていて小気味がいい。身体を張ったアクションも往年のままだ。ほんの少しだが恒例のトレーニングシーンもある。それに加えて歳を重ねた男の悲哀のようなものが伝わってくる。本作品のジャッキーは明るくて皮肉屋のジャッキーではなく、真面目で悲壮感漂うジャッキーである。
ピアス・ブロスナンは単なる優男だった007の頃に比べて、迫力のある大物を悠々と演じるようになった。本作品では二重三重のベールの影に本性を隠している役で、相手役としての重味は十分だった。
アクションはリアリティがあり、変な愁嘆場でリズムが崩れることもない。無駄が削ぎ落とされた作品で、多分何度観ても面白いと思う。
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