「デジモンで出来の悪いセカイ系を作ってみた」デジモンアドベンチャー tri. 第6章「ぼくらの未来」 ナンシーさんの映画レビュー(感想・評価)
デジモンで出来の悪いセカイ系を作ってみた
デジタルモンスターを知らない人が「きみとわたし」+「世界の危機」を題材にして作った作品です。こういった題材の作品は2000年代初めによく見かけましたが、だいたい「きみ」を犠牲にして世界を救い「わたし」が少し成長するという陳腐な結末になります。本作品もなんだかんだで「きみ(メイクーモン)」を犠牲にして世界を救うだけの話になってます。
そもそもデジモンは、アドベンチャーに限らず他の作品でも「諦めない心・信じる心」をテイマーとデジモンがお互いに持つことでこういった陳腐な結末を打破してきたし、それこそがデジモンの良さでした。
大人になるから子どものようにただ信じて行動するだけではダメだ・時には世界の圧力に屈しないといけないという世の中の理不尽さに従順になれと求める物語で結末を迎ようとするのは、物事の変革を成し遂げないただの逃げでしかないし、従来のデジモンでいえばそこからがスタート地点です。
第6章でオルディネモン(メイクーモン)を倒して平和になって完結しますが、なぜこの話を第4章でやらなかったのか謎です。第5章・第6章はデジタマで生まれ変わったメイクーモンの心情を深掘りして、イグドラシルに再利用されるメイクーモンを救う選ばれし子どもたちなど望月芽心やメイクーモンが救われる話を描いて欲しかったです。
メイクーモンは感染を拡大させたり、すべてのデジモンのデータを内包していたりする特性上、一度は倒されないといけない存在ではあると思います。ですが、それが救われてはいけない存在になっているのが謎です。
生まれながらにして殺されることが確定している無垢な存在をただ殺すだけの話でしかない本作品は、数多の物語の中でも二流だし、デジモンとしてはド三流でした。