「映画を劇場で見る価値」アバター ウェイ・オブ・ウォーター f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)
映画を劇場で見る価値
TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞
IMAX・3D・字幕版
192分の大作。
海外劇場では、本作上映時にクリストファー・ノーラン監督の新作『オッペンハイマー』の予告編が流れるというが、国内劇場では予告編の上映は行われない模様。
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立体感があり、クリアで鮮明な映像は劇場でしか味わうことができない。
昨今は動画ストリーミングサービスの発展により、映画を劇場で鑑賞することの価値の低下が懸念されるが、本作は3Dというアトラクション的価値が付加されることによって、映画に劇場公開の意義を持たせるものと言えるだろう。
今作がもっとも腐心していたのは、水中・海中での表現である。
中盤には物語の進展がないシーンが長時間続いたものの、観客は大自然との一体感、惑星パンドラの住民ナヴィが感じているような、母なる星そのものとの一体感に浸ることができる。
これは映像が3Dであることにより、単に視覚的であるにとどまらず、より体全身で感じることのできるような体験となったことに由来する。
これがまさに、冒頭で述べたような「アトラクション的価値」だ。
作品は、観客に対して惑星との一体感を体験させたあと、続いて海洋生物保護的なテーマを提示する。
動物愛護自体は素晴らしい価値観であるとは思うが、日本人目線には反捕鯨団体、グリーンピースやシーシェパードによるプロバガンダのようにも映ってしまい興醒めしてしまっった。
惑星パンドラに生息する鯨のような大型海洋生物の知性を訴え、象牙目的の狩猟のようにその生物を狩る人間を非難する目線(もちろん乱獲はいけないことである)は、現実社会における捕鯨を非難しているようにも映る。
終盤は、家族のつながりと温かさを軸に、感動的かつ崇高なラストを迎える。
物語にはいくつかの謎や気になる点(人間関係)も残っているので、公開予定の続編「3」「4」「5」に期待したい。
細かい点を見ていけば、地球人がわざわざ、主人公一家のために軍事コストをかけて作戦を展開する意味はない。
そういった難点を、前作にも登場した悪役である「大佐」の復讐心を描くことによりなんとか凌いでいる。
続編を製作する理由となる物語的駆動力が、厳密に納得いくものであるとは言い難い。
しかし映像表現、そして感動的な体験の提供という面で、クリエイティブな仕事をしたのではないだろうか。
劇場に足を運んでよかった。そのような映像を提供してくれた意味で、★4.5を与えたい。