「水のイメージ」アバター ウェイ・オブ・ウォーター Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
水のイメージ
海の描写が見事としか言いようがない!魅力的な生物たちの躍動感は観るものの目を奪い、水面の境目、泡の粒、水中で手話のように語る様子など、全てが美しい。
かたや、滅びゆく地球を捨て去り、移住をはじめる人類の破壊と醜さが際立つ。
原住民や野生動物を自分より格下に置いて身勝手に支配する傲慢さは、レヴィ=ストロース以前の人類の歴史を見せられているようだった。そして同時に、気色悪い旧態依然の家父長制が主人公を通して描かれていた。
保守的なイデオロギーで家族主義を語ること、家族の「絆」を強調する言説が強くなることは戦争の本質を見えなくさせる装置だ。国家のため、血縁のため、大義のため。人類は「個人」を格下に置くことで戦争に突入してきた。
人質のくだりで、スパイダーをナイフの刃で傷付けておいて、その後に誰も何のフォローもしない冷酷さ。何が一致団結だ。親のいない子どもたちを大人として守るのがそもそも族長の役目なのに。
戦争は超えてはならない一線を超えさせるということか?
パンドラ全土に広がる植物によるネットワークとされるエイワ。パンドラのあらゆる生命がアクセスし、感情を共有できる。ナヴィたちは女神と呼び、自分たちを導く存在だと考えている。
命の根源にはたらきかける母的エイワこそ、他者を支配する男性世界からの脱却を可能にするのではないか。
ジェームスキャメロンがどんな人か知らないけど、現代の映画監督として、今という時代と向き合い、自分なりの思想をどう観客に投げかけてくるのか、長そうだけど見届けたいと思う。家父長制を擁護するなら心底ガッカリ。だけど、刻々と変化する「水」をテーマにしたからには、壮大な前フリであることを期待して星4つ。
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