「評価すべき作品だが、今後の続編への疑問も」アバター ウェイ・オブ・ウォーター moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
評価すべき作品だが、今後の続編への疑問も
歴史を遡れば、汽車がカメラの方に走ってくるだけの映像が最初の映画である。そこには物語もキャラもない。ただ映像が動くことそれ自体への驚き。それで言うとキャメロンが毎回更新しようとしていることはある意味本質的な「映画」体験だとも言える。
彼の目指している作品の方向性から、彼の映画の話が弱いのは織り込み済みである。タイタニック以降、キャメロンは「一般大衆には複雑なストーリーだと情報量が多すぎるので映像に集中させるためにべタで行こう」と決めてしまっているんだと思う。(その読みが当たってしまったことで、彼の物語への工夫が無くなってしまったのは残念なことだが。)
では今回、その弱い物語を埋めるだけの圧倒的な映像表現を彼は10年の時間をかけて、開発できたか?今回もそのラインは超えられてはいるのではないだろうか。特に海中での浮遊感、臨場感は今までの映画では体験できない新しい感覚があり、明らかに前作を超えてきている。
今のキャメロンを見ていると、なぜか90年代のマイケル・ジャクソンを思い出す。80年代の栄光で得たあらゆるセレブ人脈や当時の最新技術をミュージックビデオや宣伝に惜しむことなく投入し、物量作戦でなんとか王座を死守していたマイケル。見てるこっちとしては「好きかどうかは置いといてなんだかとにかく凄いな。こんな金のかかったもの見たことない。」という印象になる。今のキャメロンもまさにそういう状況ではないか。一つの技術が抜きんでてすごい、というよりも総合力と物量に圧倒される。
が、同時に、ウェイオブウォーターはその方法論の臨界点が近づいてきていることも感じさせる作品だった。使っている金と時間に比例した「驚き」が作れているかというと、今回は前作からほんの少し進化したという領域にとどまってしまっている。
もう一つ気づいたのが、私はアクション監督としての彼の力量に魅了されてきたが、宮崎駿や、ジョージルーカスのように、彼の作り出す世界感が好きで彼のファンになったわけではないということだ。アバターの世界観は正直70年代のニューエイジカルチャーの思想やビジュアルそのままで、新しい世界観を生み出せてはいない。そこがこの作品がスターウォーズやブレードランナーのような作品になりえない大きな理由かもしれない。
とにかく以上のような理由から、私は今作を見て、次作以降アバターをあと3作も作る必要があるのかと疑問を持ってしまった。彼の年齢を考えれば、このままだとアバターで彼のキャリアが終わってしまう。それよりも様々なSF、アクション作品に取り組んでもらうほうが、ファンが求めているものが見られるのではないだろうか。
最後にもう一つ。前作同様、今回もキャメロンの「背の高い女性好き」フェチがすごい。わざわざキャメロンが若い時には憧れの女優であったであろうシガニーに少女の役をやらせて、その少女より背の低い人間キャラが恋心を寄せているっていう設定がもうなんだか・・。下手するとアバターが人間よりデカいっていう設定はそれだけのためなのかもしれない・・笑。