「スターウォーズ?」アバター ウェイ・オブ・ウォーター SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
スターウォーズ?
今作を見てまず思ったのが、これって「アバター」で「スターウォーズ」やろうとしてるんかな…、ということ。
「スターウォーズ」は、SFの世界観で神話的物語や壮大な叙事詩(サーガ)を描いたところが素晴らしかったと思う。
「スターウォーズ」と「スタートレック」の比較でよく出てくる意見が、「スターウォーズ」は昔からある定番の古典劇をSFのギミックで脚色したもので、SF的アイデアが物語のコアにあるわけではない、というもの。まさしくそのとおりだと思うのだけど、だからつまらない、というわけではなく、むしろ、だからこそ普遍的な面白さがあるのだろうと思う。
今作(ウェイ・オブ・ウォーター)の「アバター」も、実は舞台設定がSFなだけで、物語はどこかで見たような古典劇、因縁ものだと思う。前作はまだSF的アイデアや世界観の面白さが中心にきていたと思うけど、今作はあきらかにそれが中心の話ではない。
「スターウォーズみたい」と思ったのは、歴代の家族の因縁の物語になりそう、ってことと、「キリの父親が分からない」という設定について。「スターウォーズ」ではアナキンの父親が分からない、という設定だったことに似ている。
アナキンはミディ=クロリアンによって生み出されたのではないか?と考えられている。ミディ=クロリアンはあらゆる生命体の細胞内に生息している、知的な共生微生物で、これが多いほど強いフォースを使える。この設定の元ネタはおそらく、実際の真核生物の細胞に共生して同化して細胞内小器官となった「ミトコンドリア」だろう。
「スターウォーズ」がSF的世界観で神話をやろうとしていることを考えると、ミディ=クロリアンはキリスト教でいう「精霊」、アナキンは処女懐胎して生まれた「神の子」ということになると思う。アバターにおける「エイワ」「キリ」の関係は、「ミディ=クロリアン(フォース)」と「アナキン」の関係に似ている。
今後、キリはエイワと強力に感応できる巫女としての役回りになるとも思えるし、エイワをめぐる物語の中心人物になっていくとも考えられる。宮崎駿が「もののけ姫」でシシ神の設定によって自分自身の独自の自然観・世界観を表現したように、エイワの設定は、ジェームズ・キャメロン独自の自然観・世界観を表現したものになるんではないかと思う。
ただ、アバターは純粋なSFファンタジーというより、あまりに露骨に監督の思想の表現の場になっている、というところが少しもやもやする。というのは、現実の社会問題がダイレクトに表現されているほど、物語の普遍性は失われていくんではないか、と個人的には思っているからだ。
白人によるひどく暴力的な植民地支配、文化への蹂躙が表現されているのはもちろん、クジラ漁、イルカ漁への批判…。昔、石油が使われるようになるまでは、燃料などの用途で鯨油が使われており、欧米では鯨を絶滅させるいきおいで乱獲していた。脳から油を採った後は捨てていた、というのもアバターにおける鯨、トゥルクンにしていたのと同じ。
トゥルクンは、高度な知性をもち、ナヴィと言葉を使って会話することもできる。この設定は明らかに捕鯨に対する批判のためにされているものだと考えられるので、監督の意図が感じられすぎてしまう。論争的な社会問題については、一方的なものの見方だけを表現するのはちょっとアンフェアではないか、とか映画観てる最中に余計な事考えてしまうのだよね…。
3時間以上の映画ということは知らずに観たけど、幸いなことにトイレに行きたいという羽目にならなかったし、全然長いと感じなかった。それだけ面白かったってことだろう。映像を楽しんだって感じで、物語は「どこかでみたような話…」って思ってしまった。
前作が3Dで観てすごく良かったので、今作も3Dで観たけど、前作ほどの「すげぇぇえ!」はなかった。昔は一作目の「ジェラシックパーク」でも「すげぇぇえ!」ってなってたのに、すごい映像を観すぎて慣れてしまったのか、感性がにぶってしまったのか…。ちょっと悲しい。
確かに映像に対して「慣れ」というものはあるかもしれませんね。午前10時の映画祭で「ジュラシックパーク」がありますが、今見てどんな印象を持つのか、今から楽しみです。
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私、10年位まえから、キネマ旬報、kinenote、yahoo映画レビューなどに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報掲載です。
こちらのサイトには、昨年の2月に登録しました。
宜しくお願いします。
今作、斬新な世界観を持っています。家族というテーマは普遍的であり、
家族を守るために闘う父親という設定も、現代の家族関係への問題提起になっています。
既視感のあるシーンが多く、折角の斬新な世界観が揺らいでしまったのは勿体ないです。斬新な世界観を貫いた次回作に期待しています。
映像美が脚光を浴びていますが、映像美で観客に何を伝えるかがポイントだと思います。それに、どんなに凄い映像美でも、慣れてしまえば普通になってしまいます。当たり前になってしまいます。
では、また共感作で。
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