「『エイリアン2』、『アビス』、『T2』、『タイタニック』を創造したキャメロンの作家性が炸裂、瞬きするのも惜しい3時間12分」アバター ウェイ・オブ・ウォーター よねさんの映画レビュー(感想・評価)
『エイリアン2』、『アビス』、『T2』、『タイタニック』を創造したキャメロンの作家性が炸裂、瞬きするのも惜しい3時間12分
惑星パンドラから先住民ナヴィとの戦いに敗れた人類すなわちスカイピープルが去って10年後。ジェイクはネイティリと結ばれ4人の子供達や仲間達と共に森の中で静かに暮らしていた。しかしそんな幸せに暗い影を落とす怪しい光と共にスカイピープルが襲来、その中にはジェイクの命を狙う者達がいた。家族を守るため森を離れたジェイクたちは海辺で暮らすメトケイナ族の村に身を寄せる。森での生活とは全く異なる海での生活にジェイクたちが慣れ始めた頃、ジェイクを追う者達の影が次第に迫ってきていた。
結論から言いますが、大傑作です。3D映像の最高峰としてこの13年間不動の座に鎮座していた前作を軽く凌駕する圧倒的な映像美。凡百の3D映画は冒頭の数分でその効果が消え失せてしまうのに本作は3時間その効果が持続します。本作の主な舞台は海なのでそこで暮らす人々、そこに生きる動植物の姿がきめ細かく描かれていてそこにドラマが全くなかったとしてもうっとりと眺めていられるぐらいの美しさがそこにあります。そしてそんな映像に負けないのがドラマ。スティーブン・ラングがキャスティングされている時点でバレバレですが少し意外な形でクオリッチ大佐が復活。要するにお話の骨子は前作とほぼ同じです。しかしこの意外な形でというのがミソで、SFでありそうでなかったある設定が後半でガツンと効いてきて、ドラマの厚みが全然分厚くなります。ジェイクの子供達も皆個性的で可愛く特に長女のキリが見せる美しさが飛び抜けていて誰が演じてるのか俄然気になりましたがエンドロールを見てビックリしました。そして圧巻なのはやはり人類対ナヴィの死闘。前作では空中戦が圧倒的でしたが本作はそれに加えて水中での攻防が加わっているので息を呑んだら溺れてしまいそうなハイテンションの戦闘シーンが続きます。とにかく前作同様人類が侵略者で略奪者ですからもう彼らがバンバカ血祭りに上げられるさまを凝視しながら心の中で「もっと殺せ、殺れ!」と絶叫しまくり。なかでもネイティリの残虐ぶりは群を抜いていて、ザコ人類を片っ端から秒殺していく勇姿に痺れました。ここはもうゾーイ・サルダーニャ(本作からかどうかは判りませんが英語表記が変わっています)の魅力が炸裂。戦う女性に異常なまでの執着を見せるキャメロンの狂気を見せつけられます。今回のネイティリは戦士としても母としても逞しいので、幼い時からジェイクの子供達と行動を共にしている人間の少年スパイダーがちらりと見せる畏怖に氷のように冷たいオチをつける勇姿に仰け反りました。
観る前は3時間12分の長尺に不安ありありで臨みましたがそんなものは杞憂もいいところで、持ち込んだコーヒーを飲むことも忘れるくらい物語に飲み込まれてあっという間にエンドロールでした。『エイリアン2』、『アビス』、『T2』、『タイタニック』といった前作以外のキャメロン作品の美味しいところまでもより鮮明に再現したかのようなカットの全てが兎にも角にも美しいし、夥しい数の演奏者を集めて録音したバカみたいに分厚いサウンドトラックの荘厳さも凄まじいので、IMAX 3Dでの鑑賞がベスト。2022年の締めくくりに本作を鑑賞した後は元旦まで寝過ごしてもいいくらいです。