「何を観たのだろう。何を観せられたのだろう。ドキュメンタリー映画の中に放り込まれたような感覚。前作に引き続き映画の新しい地平が彼方に見えたような気がした。」アバター ウェイ・オブ・ウォーター もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
何を観たのだろう。何を観せられたのだろう。ドキュメンタリー映画の中に放り込まれたような感覚。前作に引き続き映画の新しい地平が彼方に見えたような気がした。
《2022.12.17. 2回目の鑑賞。1回目より楽しめた。》
《2022.12.19. 3回目の鑑賞。3回の中で一番泣いた。人間がイヤでナヴィになりたかったくらい》
①パンドラの海の生物と民とのドキュメンタリーを観せられているような映像の世界。ずっとその世界に浸っていたいような気にさせる。
人間が絡んだシーンで白眉なのは1頭のトゥルクンを狩るシーン。凄い臨場感だ。環境保護家であるキャメロンらしくどこかしら捕鯨を彷彿とさせるが、日本の捕鯨は取った鯨の殆ど全部を利用する(髭まで)からスカイピープルとは違うぞよ。
②前作でもパンドラを覆う木々のネットワークが人間の脳細胞以上の働きをしているかもせれないという言及があったが(本作でも回想シーンで出てくる)、本作ではトゥルクンは人間以上の脳を持っているような描写がある。パンドラ世界の全容を早く知りたいところだが、それは続く三作で段々明かされていくんでしょうな。
③映像技術が更に進歩して時々「いま見せられているのは果たして今まで観てきた“映画”というものだろうか」と思わせられるが、反面、物語世界は狭まったというか、話の紡ぎ方がより単調で予定調和的になったようだ。前作では、オマティカヤ族の母なる樹がスカイピープルたちの攻撃により倒されるところが一つのクライマックスだったが、本作では冒頭早々にロケットの吐く炎で前作どころではない範囲の森林が燃え落ちる。
森の民を守るためにジェイクは1年間はスカイピープルに対し破壊・妨害活動を続ける。しかし、ジェイクへの復讐心に凝り固まったクオリッチの記憶と意識をインストールされたアバター大佐の標的となった事がわかると、森の民を巻添えにしない為に一家を連れて出立するのだけれども、スカイピープル全体の目的はジェイク打倒ではなく、今やパンドラを地球人の移住先にしようとしているのだから、森の民だって決してこの先安全かどうか分からないし、スカイピープルが攻めてきた時に彼らだけで大丈夫か、やはりジェイクは必要ではないのか、という疑念が払拭できない。森の民を巻添えにしたくないとの動機からだが、人間がどれだけ執念深いか、どんな汚い手を使っても目的を達しようとするか元人間であったジェイクなら分かりそうなものだし、結局匿ってくれたリーフ・ピープルにも迷惑を掛けてしまうのだから、森から海への舞台の移行、家族の物語へスイッチするために必要だったとは思うけれども、もう少し納得できる展開にしてほしかった。
※3回目に観た後の感想:ジェイクも今回の戦いで大きな犠牲を払ったことにより、逃げることが決して解決策でもないと分かったので(父親だって完璧ではないのだ)、これはこれで良いのかな、と思いました…
④とはいえ、映像の素晴らしさ・魅力が物語がやや類型的という小さな欠点を補って余りある。
⑤トゥルクンという生き物を創造したことが素晴らしい。
同類内での争いを止め“殺し合う”ことを止めて、それを掟とし守っているだけでも遥かに人間より知的な生物だ。
「共生」と「調和」、「命」「平和」をテーマとする『アバター サーガ』に最適の生命体だ。
パヤカンとロアクとが絆を結び、共に泳ぐのは本作で最も美しいシーンのひとつ。クライマックスの戦闘シーンで、ロアクを助ける為にパヤカンが大活躍するところも本作で最も血湧き肉躍るシーン。
⑥もう一つ本作に不満があるとしたら、ロアク(家族の中に一人はいる問題児)は良く描かれているので感情移入できるのだが、ネテアムの描写が少ないので感情移入できるところまでは行かない。ネテアムが死んだ時は、ネイティリの嘆きに涙を誘われるけれども、もしネテアムにもっと感情移入出来ていればもっと喪失感に襲われて心が震えたと思う。