「あるスパイの、素晴らしき人生」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ すけあくろうさんの映画レビュー(感想・評価)
あるスパイの、素晴らしき人生
前作のラスボスは監獄でほくそ笑んだ。
今作のラスボスは畳の上で哀れんだ。
ジェームズ・ボンドの人生は虚しいものだったか?のちに何も残らない人生だったか?
ヴェスパー・リンドへの贖罪がついて回ったダニエルグレイグ・ボンドシリーズも、ようやく終了。
いやはや、すんごい映画でした。
正直さいしょにヴェスパーの墓がふっ飛ばされたあたりでもうショックがえげつなかったのに、
フェリックスまで死んでしまって、前半は気が落ちに落ちる展開でした。
後半、というか終盤の島でのシークエンス。
主人公が愛した女性は不幸になる、というスパイものでは定番のジンクスを、感染によって表現するのは見事だなと思いました。
「君は絶望に感染してしまった。もう頬をさえずることも、キスすることもできない。」
敵がわかりにくかったり、話がツギハギだったりと、不満はないことはないけれど、まぁコレが007ってことで。
フェリックスの言葉がすべてを象徴しています。
「人生は素晴らしいものだ。そうだろ?」
死の淵に立っていながら、そう断言できるということにとても感嘆しました。
思えば失い、傷つき、立ち上がる人生だったジェームズ・ボンド。
時間はいくらでもあるのに、あなたと過ごせる時間にはいつか終わりがきてしまう。
こんな不意打ちのパンチライン、泣かないわけないですよね。
ラストは車がトンネルをくぐるシーン。
オープニングと重なる名シーンでした。
銃口の中で生きた、あるスパイに乾杯!
Vodka Martini, shaken, not stirred.(ウォッカマティーニを。ステアせずシェイクで)
追記
レイフ・ファインズさんの出番があんまなかった。
やっぱし007/スペクターで見せてくれた橋でのひとこと、「ダブルオーセクションだ、さがりたまえ!」が最高だったね。
さらなる追記
Amazonが作ってる007、どうなるんですかね
ダニエル・グレイグ版を見て育った僕みたいなひとが、ダニエル・グレイグ版にケチを付けたピアース・ブロスナン版好きのように、
またケチをつけていくんでしょうね。
そしてまた、大好きになっていく!
