「微妙にツボをずらしている、惜しい女性向け映画」ニューヨーク 最高の訳あり物件 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
微妙にツボをずらしている、惜しい女性向け映画
アニメーション仕立てのOPが、滅茶苦茶可愛い!インテリア、ファッション、料理、ビジュアル面はどれもがお洒落で、正に女性雑誌の典型のよう。
一人の男を挟んだ二人の女。文学の学位も持ちながら、キャリアを諦め家庭を守った前妻マリアと、モデルでデザイナーのキャリアウーマンジェイド。家庭的でナチュラル派のマリア、神経質でスタイリッシュなジェイド。正反対の二人。
そこに、子持ちながら若くて仕事への野心も捨てきれないマリアの娘、若く美しく奔放な元旦那の今カノもちょっぴり加えて、様々な年齢、生き方、嗜好、肩書きの女性の、求める幸せ、思うようにできないもどかしさ、社会的制約などを描いている。
似た立場にありながら、違う生き方を選んだ二人の女性の、互いへの羨望と反感、プライドと劣等感、女としての悩みと共感などは、多くの女性にとって、どこかしら思い当たる所があるだろう。
明らかに女性向けに作られた作品。
であるのに、キャラクター達の心情や動機、行動に、女性から見て微妙に共感しきれない部分がある。
元旦那・ニックへの感情はとうに割り切れたように思えるマリアが、家の所有権に頑なに拘る理由も明確に語られないし、全身勝手でく魅力の感じられないニックへの愛を引きずるジェイドの気持ちも不可解。マリアの娘の、仕事の達成感と子育ての間での葛藤も今一つはっきりしない。
で、結局どういう事???と、納得いかない気持ちのまま、不消化に終わってしまった。
いっそ、元旦那はとっとと切り捨てて、女の幸せの形は色々あるわよ!と、各々に逞しく生きていくか、旦那の、ダメ親父ながら憎めず愛すべき部分を、しっかり強調してくれていれば良かったかも。
昔、秋里和国の『THE B.B.B.』という少女漫画がありまして。三角関係で互いに切り捨てられない男女(男・男・女/ゲイ関係も有り)が、三人で重婚、子供を持って家族として生活していくという、この映画にも通じるような結末で…。
当時中高生だった私には、こんなのアリ!?と大変衝撃的だったのだが、大人になった今となっては、所詮結婚とは他人同士の共同生活。愛情、同情、友情、金銭、理由はどうあれ、他人から見てどんなに奇異であれ、本人達が納得してそれで幸せを得られるなら、したいようにしてもいいんじゃないかな…と思える訳だが。
そういう形に着地させるなら、マリアとジェイドの同士意識、ジェイドの子や孫への愛情だけでなく、ジェイドが諦めきれないだけのニックの魅力や、愛情は既になくても良好に見えるニックとマリアの関係まで、きちんと納得できるように描き込んで欲しかった。
それが最善と思えるなら、私はアリな結末だと思う。
因みに男性に関しては、元旦那のダメ親父っぷりが際立つばかりで、完全にストーリーからおいてけぼりなので、男性が見て面白いのかは、更に謎…。