「村社会」グッドランド いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
村社会
第30回東京国際映画祭にて鑑賞
ルクセンブルグの農村が舞台の作品。いわゆる『ベネルクス三国』の一つ、そして金融強いてはヨーロッパに於けるタックスヘイブン、
それに関連する金持ち国という知識しかなかったが、元々は農業と深く結びついている国であったそうだ。そんな同国の農村での忌まわしい出来事がサスペンスにて描かれるストーリーとなっている。
監督の産まれた農村に近い場所でロケが行われているようで、同国ではそれぞれの農村にブラスバンドが設置されているそうだ。正にメタファとしての閉鎖的社会がそこには表現されている。
今作品、監督も上映売り込みに使っていたそうだが、まさしく『デヴィッドリンチ』的なシークエンスが散りばめられている。リンチよりも親切心があるのだがw
あらすじとしては、カジノから金をくすねてきた男がほとぼりを冷ます為、或る村に逃げ込む。閉鎖的な村なのだが、ブラスバンド指揮者の長老的な人間に気に入られ、色々と親切にされていく内、徐々に溶け込んでいく。そして約束されたことが一つ。それは人妻と交わらないこと。その鉄の掟の重要性を徐々に感じ取る男が、偶然見つけた何枚かの村の奥さんのあられもない写真達。と同時に行方不明の或る男とその元妻。関わりの中で、徐々にその男の心情は変化して、村に溶け込み、同化していく。そう、この映画のキモは実際、徐々にこの男の顔が変わっていくのだ。長髪が短髪に、鼻、歯も、目の色も変わっていく。最後はもう始めの頃の顔とは面影も無い位の変貌だ。そして、失踪した男の身代わりとして村と共犯関係になるのである。
女達の裸体写真は失踪した男(※結局は殺されて肥溜に沈められていた)が撮ったのか、掟を破ったから殺されたのか、その辺りも含めて、一度だけでは謎は解けない細かい伏線、メタファの数々が埋め来られていて、よく練られた作品なのである。