「ポップな演出、ドロドロの現実」最初で最後のキス 昭和ヒヨコッコ砲さんの映画レビュー(感想・評価)
ポップな演出、ドロドロの現実
オープニングから妄想と現実の区別が曖昧な演出が多く、何か楽しいことが起こりそうな青春劇を期待させる。
が、クライマックスはビックリの展開。
急展開。
ゲイであることを否定も肯定もせずに、自己表現にプライドを持つロレンツォ。
イケてる先輩と付き合っていて、その先輩グループと4Pしたと言ってのけるブルー。
亡き兄にコンプレックスを抱える自己表現が苦手なアントニオ。
はみ出し者の3人がお互いを拠り所にしながら徐々に歯車が狂っていき、最終的にはそれぞれの感情はまるで異なる場所にあるエンディングに辿り着くのはとてももの悲しい。
田舎の保守的な性質への否定やロレンツォの自己表現を容認するべきだという感想に落ち着くのは分かるが、個性を発揮することの危うさを私は感じた。
誰に譲ることもなく個性を発揮するのであれば、個性はぶつかり合い、傷つけ合い、ただの存在を主張するための椅子取りゲームでしかなくなるのではないかと思う。
ブルーは「誰かがもう少し勇気を出していれば」と述懐しているが、私には「誰かがもう少し相手へ配慮していれば」と感じた。
アントニオはロレンツォのことが好きだと焚きつけたブルー。
アントニオの気持ちを確かめることもしなかったロレンツォ。
ロレンツォがゲイであることを知っていながら一線を引かなかったアントニオ。
それぞれに失敗があったと思う。
最後のシーン、「こうであったら」という理想が描かれているようだが、あの場面に至ってもアントニオの気持ちは無視されていて、どうしようもない気持ちになった。
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