「西部劇版ハンムラビ法典」スリー・ビルボード 幸ぴこリンさんの映画レビュー(感想・評価)
西部劇版ハンムラビ法典
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フランシス・マクドーマンドが終始 作業着+野暮ったいポニテにバンダナというまさに現代版カウボーイみたいな格好で、迷い人くらいしか通らないと言われる道の先にある街で起こる復讐劇。これはまさに現代の西部劇。3枚の看板をきっかけに負の連鎖の火蓋が切って落とされ、まるでハンムラビ法典のように、やって、やり返される。陳腐な言い方になるが「辛い目に遭うとはこういう事」と学び負の連鎖を知る。どこで断ち切って人を赦すかが自分次第だ。ケイレブ演じるレッドが悪意も無いのにミルドレッドの助けになったばかりに自己中レイシスト警察のディクソンから暴行を受けたにも関わらず、大火傷を負って病院で再会したディクソンに腹を立てながらも一杯のオレンジジュースを差し出すシーンがこの映画の象徴だと思う。怪我で痛む手でストローの向きをディクソン側に向けるシーン、涙無しにみられなかった。
負の連鎖が間違いだと分かっても立ち止まれない者もいる。ウィロビーが末期癌と知りながら看板を出した時点でミルドレッドの決意の深さは相当なものと分かるけれども、残されたものたちの喪失感や憤りに触れてゆく中で別の道をいつか彼女は見つけるのかも、と思わせるラストが凄くじんわりした。
個人的には間違いなく今年イチの映画だと思う。
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