「少年の小さな冒険譚」泳ぎすぎた夜 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
少年の小さな冒険譚
雪に包まれた小さな町に住む少年の小さなアドベンチャーを台詞を排した描いた作品。出演している少年とその家族は、舞台となった町に住む本物の家族で、自然体の姿を捉えている。フィクションだがドキュメンタリーとの境界線に触れているような、そんな作品だ。
少年の素の魅力がそのまま生かされていて、彼の魅力のおかげで台詞がなくても退屈することはない。かえって静寂に包まれた雪の町の美しさが際立だせることが出来ていると思う。
2人の監督は『大人はわかってくれない』や、ジャファール・パナヒの『鏡』などを意識しているそうだが、アッバス・キアロスタミの『友だちのうちはどこ?』を個人的には連想させた。少年の小さな冒険譚であり、目的を果たす最中に様々な出会いがあるという点、素人の子どもを使いドキュメンタリータッチを用いる点など共通点は多い。
舞台となった町は大人から見れば何もない寂れた町かもしれない、だが子どもの目には新鮮な冒険のしがいのある町に見える。その視点をきちんと観客に共有させるようにできている良作だ。
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