ラモツォの亡命ノートのレビュー・感想・評価
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【チベット問題】ではなく【ラモツォ】
本作の背景には、半世紀にも及ぶ中国とチベットの関係がある。しかし、それらは強調されない。
ラモツォの姿、子ども達の思い。難民と言えど一人の人間であることに気付く。
顔立ちは日本人とほとんど変わらない。穏やかな時間が流れる。
スクリーンの中のラモツォは明るい。パン売りの仕事が重労働なのは普通に解る。夫に会えない。でも、決して暗くない。
パパは悪くない。だから私が勉強して弁護士になる。という健気な娘達にも心を惹かれる。
インドのダラムサラは、逃げてきたチベット人の街。半世紀も経てば難民キャンプも街となり、二世・三世が生まれる。非日常な日常がそこにある。
難民というと、ともすれば「裸同然で物を食べるアフリカの子ども」のようなイメージが浮かんでしまうのではないだろうか。よく考えれば、高山地帯で裸で生きていくことなど出来ない事くらい解る。
それ程までに日本人には難民は遠い存在に思えてしまう。
個人的には、「そうだ難民しよう」で一世を風靡したはすみとしこ氏や、訪中して「チベット問題は内政干渉」と述べたと言われる岡田克也氏など、是非に見て頂きたいと思う。
そして、一緒に考えて欲しい。彼女達は決して遠い存在ではない。
最後に。ラモツォの夫であるドゥンドゥップ・ワンチェンは、2008年に「ジグデル 恐怖を乗り越えて」を撮影したことで国家分裂扇動罪で逮捕・投獄された。
作中ではあまり触れられていないが、彼の撮影したこの短編映画は、日本人からすれば”これで逮捕されるの???”という内容だと思う。機会があればこちらも見ることをお勧めしたい。
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