「なんだか、たまらない気持ちに包まれてやまないキルギス映画」馬を放つ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
なんだか、たまらない気持ちに包まれてやまないキルギス映画
このところグローバル化と共に小さな声や小さな物語はかき消され、世界の様々な国の映画に触れる機会はむしろ遠のいたように思える。だが、そこに来て本作のようなユニークなキルギス映画に触れると、心の中のあまり起動したことのない感性が刺激され、たまらない気持ちに包まれた。
大自然広がる田舎町。貧富の差も大きく、人々は昔ながらの文化や価値観を忘れかけている。そんな中、本作では冒頭から「馬を放つ人物(馬泥棒)」が明かされており、物語の進展に合わせてその男と行為を徐々につなげて、背景にある理由や考え方を明らかにしていく流れを採る。シンプルかつ大らかなストーリーながら、そこに歴史の流れと彼らの暮らし、その縦軸と横軸がしっかりと描かれ、不思議と観る者の心を打つ。その視座が普遍性に触れる。
主人公の男も良いが、その凛とした妻と無垢な息子がとても良い。久々に映画で、世界の果てまでどっぷりと旅できた気がした。
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