「犠牲的精神」永遠のジャンゴ ku-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
犠牲的精神
ナチスがジプジーを殺し始めているという情報を聞きつけると、ルイーズはLouise de Klerk(Cecile de France )ナチスの迫害からジャンゴ ラインハルトDjango Reinhardt(Reda Kateb)を助けるため、ナチスの将校にもつき、ジャンゴのために力を貸す。
婚約者であったロシア人画家の自殺による愛の破局で、心の癒しをジャンゴの音楽でみつけ、ダンスを踊ることで自分が変わっていったと、ドイツの将校に話すルイーズ。一旦心が死んでしまった彼女だが、彼のギターが再び活力をあたえる。そのため自分がナチスからの暴力にあっても、ジャンゴの才能を守るためにも愛を貫くためにも、オーストリアに逃亡させる段取りをつける。
ドイツ将校やその家族がパーティーをしている間、ジプシーの若者が見張りの目を盗んでオーストリアに逃げるシーン。ここでジャンゴの楽団の演奏は力強い。皆を音楽と酒で酔わせ、逃亡手伝う。
彼の才能のためというが愛している人を逃がすため、ルイーズの犠牲精神に心を打たれてた。ジャンゴが『あなたは怖い』というシーンがあるが、それは
ジャンゴ『怖い』
ルイーズ「大丈夫よ。スイスとの国境でナイチンゲール(国境越えを助けてくれる人)が待っているから」
ジャンゴ「あなたが怖いんだよ』
ルイーズも革命の分子のようだ。自分が殺されるのをわかっていて、ナチスの手からジプシーやジャンゴを救う。あっぱれ!
ジャンゴはベルギー生まれのロマ人で作曲家でギタリスト。この映画はナチスの迫害から逃れオーストリアに行き、フランスに戻りコンサートを開くまでを描いている。彼のジャズのスManouche Jazz,というらしい。これはスイングと伝統的なジプシーの音楽が混ざったものらしい。当時ナチスはこのようなアメリカのジャズ(黒人の文化を劣勢と捉えていた)を受け入れていなかった。コンサートではスイング、ブルース、ダンス、そして立ってもいけないと。これらの一部はいまだ、クラッシック音楽界の鑑賞の仕方である。
これは歴史を踏まえた作り話なのでジャンゴの本当の生活とは違うらしい。それに、ナチというとユダヤ人が犠牲者のトップに浮かぶが、黒人、ジプシー、身障者、ゲイなども組織的に淘汰していたわけで、この映画で初めてジプシーの迫害の歴史が垣間見られたこと、感謝する。ジャンゴが作曲した『ジプシーの仲間に捧げる鎮魂歌』(Requiem for Gypsy Brothers) の譜面は全部残っていないらしいが、心にしみる鎮魂歌だ。