「“退調”が始まってからのスティーブに同じ情を感じます」スペインは呼んでいる きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
“退調”が始まってからのスティーブに同じ情を感じます
ご存じ、シリーズの続々編なり。
芸人スティーブ・クーガンとロブ・ライナーの珍道中、再開ですね♪
この年末年始は、30日(火)を除いてすべて出勤という快挙の僕でした(笑)
寒い寒い午前2時。夜明けの出勤まえに《彼らのスペイン旅行》に 気分だけでもと一緒させてもらえました。
サッチモのノリノリスイングで始まる本編なのですが、スティーブの駆るレンジローバーが「EU離脱後のナンバープレート」に変わっています。
まずは時の流れを感じさせてくれますねぇ。
(⇒「ペンギン・レッスン」ではさらに時は進み、彼はそのタイムラインでも老年の域です。僕は本作でもそこに目を留めました)。
コロナ禍が収まり、マスク無しの会話が可能となり、レストラン巡りが再開という時節の話です。
・・
相変わらず、二人のセリフは被りまくりです。会話のリズムはよろしくない。でも自然なままでしゃべくりまくるこの男たちの姿。いわく
「50代は人生最高の円熟期」だそうです。
憧れの船。海。バルでの食事。そして光。
何よりも半そでTシャツでのロンドン出発シーン。あの出で立ちが厳寒の信州にいる僕としてはそれだけでホッとする。
けれど「三匹目のどぜう」はいなかったですね。シリーズとしては監督を含めて、おじさんたちも、少々息切れだったかな?
本人たちも「人生のマンネリ」と「二番煎じ」をちゃんと自虐して突っ込んでましたから、そこを含めてのコメディではありました。
・・そこまでが映画の前半。
でもそれでも、このシリーズ3作目は
ちまたで言われているほどは悪くもなかった。それは「全篇通して貫かれている二人の老いの描写」ゆえです。
まずおやっ?と思ったのは
プリマスからの出航の「黒雲の垂れ込めた港の、灰色の風景」。
スペイン到着後もずっと「雨」。そして「夜露」。
二人とも体力の衰えを何とかカバーすべく旅先でもワークアウトしている。
ロブは高齢出産の妻と3歳の子を抱えるオヤジで、自身55歳の初老の男性だし、
プライドだけは高かったスティーブも、すでに業界では時代遅れ。今どきの風に乗り切れず、プロデューサーからはポストを外されての傷心の旅となり・・
その流れで映画はさらに、途中から負の状況を加速します
いつもなら添え物に過ぎなかった子分のロブは、スティーブの知らない所でヘッドハンティングを承諾して、こんなにも意気揚々です。
かたやスティーブは息子にも恋人にもそっぽを向かれて、メンタルは堕ち続けという流れ。口数少なく黙ってしまう彼がそこにいました。
僕自身が年を重ねると、
演者の加齢具合や、役者たちの少しずつの枯れていくさま、そして彼らの精神面での衰えも、とても目に止まる部分です。
かつての映画の見方とはまた違って、いちいちうなづいて微笑みながら、彼らの老化と、ラストスパートを見守った感じなのです。
ロブの自信に押されて土俵を割っていくスティーブ・クーガン。
別れた妻と、息子のおもかげを追ったラスト・・。
泣くなよ、スティーブ。頑張れ!って感じ。
シリーズものは、出演者たちのこんな“栄枯盛衰”を観ることも出来る。だからそこも面白いのです。
晴天のスペインをロケに使わなかったのは、きっと計算された演出。
新しい生命=孫が出来て、初めて旅先の空が晴れるのも計算された演出。
夢は儚く、ガス欠の哀しみでドラマが終息するのも同じこと。
星4つ
