「思わず抱きしめたくなる愛おしさ」悲しみに、こんにちは とえさんの映画レビュー(感想・評価)
思わず抱きしめたくなる愛おしさ
避暑地にいるような気分に浸りながら、かつて小学生だった自分を思い出しつつ、最後はホロッとした作品だった
1993年の夏
小学生のフリダは病気で両親を亡くし、バルセロナから田舎町で暮らすいとこの家で暮らし始める
日本でいえば、小学校2年生か、3年生ぐらい
「ママが死んだよ。天国に行ったよ」と言われても、イマイチ理解できない年頃
そのフリダが、生まれ育った町と家族の元を離れ、いとこの家の娘として暮らし始めることで
ようやく、「生と死」を理解し始める
この映画は、監督の自伝的要素が込められているそうで
監督にとって、母親を亡くした1993年という年がとても大切で、記憶に残っている年だったからこそ、とても色鮮やかにイキイキと描かれている
太陽の光をたっぷり浴びたフリダからは、病気の不安を感じさせず、むしろ、溢れ出る生命力を感じさせる
そうして、新しい土地で新しい家族と一夏を終えたフリダは、ようやく自分の置かれている状況を理解するようになる
私が、そのフリダを見ていていいなぁと思ったのは、すごく素直で、正直なところ
他に引き取り手がなく、まだ詳しく解明されていない病気かもしれないフリダを引き取った親戚の家は、私はとても立派だと思うけれど
フリダは、彼らから本当の両親のような愛情を感じられず、反発してしまう
でも、そんな反抗の一つ一つが「私を愛してください」と訴えるフリダなりの愛情表現に思えて、そんなフリダを思わず抱きしめたくなってしまう愛おしさを感じた
それはきっと、フリダの新しい親にとっても同じで、だからこそ、この映画には彼らがフリダを抱きしめる場面が多かったように思う
その幸せを感じたフリダは思わず泣いてしまうけど、そんなフリダを見て、私も思わずもらい泣きしてしまった
この映画は、監督のお母さんに捧げられているけれど
それは、その後、フリダは新しい両親の元で幸せに暮らしているけれど、本当の両親のことも忘れていないよという意味だろうと思い、余計にジンワリとしてしまった
ぜひ、この暑い夏に避暑地に行くような気分で、少女フリダの溢れ出る愛情を抱きしめてあげて欲しい作品