「TOWER/タワー 物語が始まったと思ったら、終わり。」ダークタワー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
TOWER/タワー 物語が始まったと思ったら、終わり。
ホラーの帝王と呼ばれるスティーヴン・キングだが、非ホラーの作品も少なくない。
そんな中でも本作は異色のジャンル。
ダークファンタジー・アクション!
ある少年が毎夜見る異世界の悪夢。
この現実世界とは別次元に存在する“中間世界”。
その世界にそびえ立つ、あらゆる世界の均衡を保つ巨塔“ダークタワー”。
それを破壊し、世界の破滅を目論む黒衣の魔道士と、塔を守る使命を課せられながらも、復讐に燃える“ガンスリンガー”と呼ばれる拳銃使い。
ある特別な能力を持つ少年は、戦いの渦中へ…。
ホラーとは全く違うキングの異世界。
当代きっての天才作家なだけあって、そのイマジネーション、スケール!
“ガンスリンガー”に扮したイドリス・エルバのアウトロー的なカッコよさ。
対するマシュー・マコノヒーは、悪のカリスマたっぷり。
両者のスリリングな対決、アクロバティックなガン・アクション、異世界や怪物などVFXを駆使したビジュアル。
魔術と銃撃、現実世界と異世界が交錯。
キングらしい少年の成長劇。
ダイナミックで壮大な物語が、今始ま…
…え? アレ? これで終わり?
一見、一本の映画として纏まってるように見えて、何か急ぎ足というか、物足りない。
それもその筈。
原作は全7部と別巻1冊から成り、完結まで22年の歳月を費やした、キングのライフワークとも言われる超大長編。
それを100分弱の尺に収めるのは…。いや勿論、全てを100分弱の尺に収めた訳じゃなく、おそらく今回は第1部だけを映画化したのだろうが、それでも…。
確かに話は面白味充分。
でも、少年やガンスリンガーや魔道士ら各々の背景やドラマは淡白。本来はもっと深く描かれている筈だ。
タワーや異世界の事ももっとよく知りたい。
原作未読でも、嫌でもそれらを痛感してしまった。
もし『ハリポタ』を100分弱の短い尺の一本の映画にしたら、さぞや失望しただろう。
尺が短かった分見易かったと言えば見易かったが、その分、作品本来の魅力が失われたのは否めない。
映画にするより、今流行りの高クオリティーのTVシリーズにしてじっくり描いた方が良かったかもしれない。
キング先生、今は出来に満足してると仰ってるが、いずれもう一度映像化し直したいと言い出したり…?
第2の『シャイニング』になったりして…?