劇場公開日 2018年6月16日

「難聴だということが全く感じられないほど素晴らしい!」フジコ・ヘミングの時間 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0難聴だということが全く感じられないほど素晴らしい!

2019年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

幸せ

 「音楽堂まで行ってください」「はい、フジコ・ヘミングウェイのコンサートですね?」「そうそう」と客と会話をしたことを今でも覚えている。後になって恥ずかしくなりながらも、ヘミングウェイじゃありませんから!と突っ込んでもらいたかった自分がいる。

 年齢は公表してないらしいが、約86歳くらいのフジコ。還暦を過ぎてから売れ出したピアニストだ。80を過ぎても年間60か所のコンサートをこなすくらい、歳はまったく感じられない。パリ、ベルリン、サンフランシスコ、東京、京都、と自宅を持っているが、猫や犬を飼っている事実。ベルリンの愛犬アンジンがとても可愛かった。また、ラフマニノフの住んでた家など、人が暮らした家に興味を持ってることも彼女らしいんだろうなぁ。

 彼女自身難聴のためだろうか、自宅のピアノはちょっと調律されてないようにも感じられたが、彼女の奏でるピアノは優しさに満ち溢れている。弟で俳優の大月ウルフが茶化したように「ピアノは男が弾くもの」だという言葉もあったが、まるでそれに抗っているかのように女性の繊細さを表現している気もした。

 ハーフだということで学校ではイジメにも遭い、戦争直後は国籍を失うという過酷な経験をしながらも飄々と語る過去がとても新鮮に聞こえる。14歳当時の絵日記を織り交ぜながら、フジコの人となりを感じられ、全ては天使から試されていると施しをしたり、動物愛護に満ちた優しさが伝わってきた。今度はどんなピアノに出会えるんだろう?他の楽器と違い、自分のピアノを運べないのもプラス思考で考える生き様が素敵でした。

kossy