劇場公開日 2018年5月12日

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「【”時の流れゆく中で・・。”若き女性が、過去の哀しき想いを抱えながら生きる中で、日々の小さな幾つかの出来事により静やかに再生して行く姿を描いた気品ある作品。】」四月の永い夢 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”時の流れゆく中で・・。”若き女性が、過去の哀しき想いを抱えながら生きる中で、日々の小さな幾つかの出来事により静やかに再生して行く姿を描いた気品ある作品。】

2022年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 中川龍太郎監督は、オリジナル脚本で確実にステップアップしてきている若き監督である。
  「わたしは光をにぎっている」「静かな雨」そして今年公開されせた「やがて海へと届く」を劇場で観て、彼の透明感や、光の使い方。静やかで、気品ある作風に魅力を感じている。
  それは、今作でも同様である。

■3年前に恋人を亡くした滝本初海(朝倉あき)。
 音楽教師を辞めた彼女の穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。
 元教え子との遭遇、染物工場で働く朴訥な青年からの思いがけない告白。
 そして、3年間彼女の苦しめていた心の奥の小さな秘密。
 だが、初海はそれを恋人の母親(高橋惠子)に涙ながらに告げる事で、喪失感から緩やかに解放されていく。

◆感想

・今作品で、初海を演じた朝倉あきさんの透明感溢れる姿が印象的である。
・映画館で「カサブランカ」を一人で、観賞するやや寂し気な表情。
・元、教え子がDVを受けている事を知り、助け出し二人で公衆浴場で湯につかる姿。
・そして、朴訥な青年(三浦貴大)との出会い。

■初美が、恋人だった男の実家を訪れるシーン。男の母親に男とは5月前に別れていた・・、と涙ながらに告白するシーン。それに対し母は優しく”一緒に時を過ごしてくれて有難う”と答えるシーンは、初美が過去の哀しみから解き放たれたシーンであろう。
高橋恵子さんが、優しき母を絶妙に演じている。

<今作は、映画では王道の”喪失から再生”を描いた作品である。
 中川龍太郎監督らしい、気品ある優しさと、主人公の初美の微かなる希望と幸せな将来を感じさせる作品の仕上がりが良き作品でもある。>

NOBU