劇場公開日 2017年9月1日

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「【シンプルな設定故の緊迫感が凄い。目に見えぬ伝説のイラクのスナイパーと米国軍曹との頭脳戦、心理戦ともいえる闘いを静かだが、緊迫感溢れる映像で描き出した作品。】」ザ・ウォール NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【シンプルな設定故の緊迫感が凄い。目に見えぬ伝説のイラクのスナイパーと米国軍曹との頭脳戦、心理戦ともいえる闘いを静かだが、緊迫感溢れる映像で描き出した作品。】

2020年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

興奮

知的

ー”生きていて、眼に見える”登場人物はアメリカ兵のアイズ(アイザック:アーロン・テイラー=ジョンソン)とマシューズ(ジョン・シナ)の二人のみ。-

 冒頭、”2007年イラク戦争末期”とテロップが出た後、荒涼としたイラクのどこかの岩場に隠れるアイズとマシューズの姿。吹き荒れる砂交じりの風。目の前にはイラクのスナイパーに狙撃されたと思しき6名の死者。

 数時間過ぎても何の動きもない事で、マシューズは”無防備な”前進をするが・・。

ー彼らの目に見えない敵のスナイパーは、
 ・時に、アイズが援軍を無線で依頼する上官に成りすまし、アイズを陥れようとし、
 ・時に、アイズが辛うじて身を隠している”壁”はかつてのイラクの小学校の壁で自分はそこの教師だったと語り、アメリカのイラク侵攻を静かなトーンで批判し、
 ・時に、”そろそろ、失血のため、意識が朦朧としていないか・・、水はもうないだろう・・”と囁き、
 ・時に、エドガー・アラン・ポーについて語り・・
 ・時に、彼らの同僚で”撃たれた”ディーン”の家族の話を聞きたがり・・

 不気味極まりない・・。ー

 そして、有る真実がアイズの口から語られ、アイズが漸く自ら”壁を崩して”見えないスナイパーを倒し、援軍が来たと思ったら・・

 ■目に見えない声のみのスナイパーは、イラク戦争時、37名のアメリカ兵を殺害したと言われるスンニ派武装グループ”Islamic Army in iraq"の狙撃手だった”ジューバ”がモデルのようである。
 米軍で訓練を受け、少し訛はあるものの流暢に英語を喋り、文學の教養もある元教師のアメリカに対する静かな怒りが観ている側に届く・・。

<ダグ・リーマン監督が今作を撮った姿勢が、明らかに当時のブッシュ政権への静かな怒りであることが伝わり、イロイロと怖かった作品。
 吹きすさぶ風の音。時折響く銃声。最後まで姿をみせないイラクのスナイパーも”怒りを押し殺した静かな声も不気味であった。
 全く”イラク戦争末期”とは思えない、緊迫感溢れる90分であった。>

NOBU